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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
「寮だが……どうしたって、何が?」
石川の問いかけに疲労感がどっと押し寄せてくる。 『三浦医師と一緒に戻ってくるかと思ってたんだよ』 「あのなあ……いくら俺だって、着替えたり、風呂入ったりするぞ」 人として当たり前の生活の営み。その自由すら、与えられないとでもいうのか。 『そりゃそうだが』 「……三浦医師がわざわざ呼ばれて行ったんだ。それなりに具体的な話にはなったろう? それに対して俺がどうこう口を出すこともない」 『……西脇……?』 「現実問題として、俺が口を出すことじゃない。もともと、決断はDrに委ねている。Drがどうしたいのか、それだけが問題だっただけだ」 西脇は深いため息をつくと起き上がり、携帯を握りなおした。 「もう少ししたら病室に戻る。お前たちはもう部屋に戻っていいぞ」 『Drを一人残して?』 「残すなにも、いつものことだろうが……仕事の時にはいつも……」 誰もかれもが結局のところ、西脇が橋爪の元にいることが当たり前だと思っているのか。仕事や体調不良を抱えてなお、それでも橋爪の元へ居ろと。 『……確認しただけだよ。Drも、今のままじゃどうしようもないだろうけどさ、休暇を取ることで少しでも気分が変わればいいと思って』 「……次の休み、一緒に外に出る約束はしている。お前が気にすることでもない」 『……ならいいんだ』 幾分かほっとした声音の応え。 それでも、焦りや不安、そういったものを抱えているのは当然か。それが隊長としてか、友人としてかは別としても。 「……石川、おまえ抜きで話を進めて悪かったよ」 『西脇?』 「本来なら、宮沢さんじゃなくて、おまえが言い出すことだったろう? でも、おまえは必至でDrを守ろうとしてくれていた。それなのに」 『……結果論だけど、俺はあれでよかったんだと思うよ。宮沢さんが言い出してくれなかったら、俺ではずっと言い出せなかった。そうした方がいいとは思っていても……守っているつもりで、かえって傷つけていたかもしれない。さっき、Drと話してて……そんなふうに思った』 「……そうだな……」 『西脇。今日はお前も本調子じゃないだろ。他に看護師を誰か回してもらうから、ゆっくり休め。な』 「……あー、はいはい」 暗に橋爪の部屋へは行くなと言われている気がした。実際、今の体調が橋爪に悟られてもしたら、橋爪のことだ。自分の不調はそっちのけで西脇の体調の心配をすることだろう。 「Drにはちゃんと休むよう……」 それだけが気がかりで。 『ああ、三浦医師にお願いしておく』 ほんの少し距離を置いて、ほんの少し時間を置けば。そうすれば、また今まで通りに橋爪にもまっすぐに向き合えるはずだから。 実際、先ほどまでの皆とのやり取りの中で、帰国後ずっと見ないふりを続けていた自分の不調にも気づかされてしまったから。 通話を切る気力もなく、そのままソファにもたれた。 目を閉じても浮かんでくるのは橋爪の姿だった。合わせて浮かぶ苦い気持ちを必死で押し殺して。 いつもなら精力的に行う筋トレも、仕事のための情報収集も何もする気力がなく。 なんとなく部屋の呼び出しのブザーが鳴った気がし、ふと顔を上げた。しかし呼びかけがあるわけでもなく、追加で鳴らされるわけでもない。一瞬だけ感じた人の気配も気のせいだったようだ。 西脇は眠気に誘われるがままに、そっと目を閉じた。 PR この記事にコメントする
永遠の詩
初めてご挨拶させて頂きます。宙と申します。
(随分以前からお邪魔はしておりましたし、最近ようやくHNを持ったので違う名前か匿名でこちらからお送りしたことがあったかもしれません) Silly様の作品が好きで、このお話も心の底から好きで、身悶えながら長く長く続きをお待ちしていましたので本当に嬉しいです。大げさでなく感激でマウスを握る手が震えてしまいました。本当に本当にありがとうございます。 これからも一層楽しみにしています。 (お忙しいご様子ですので、どうかご無理のないよう続けて頂けたらと思っております) 追伸 この場所からお伝えするのは迷ったのですが・・・ もう一つの素敵サイト「各駅停車中」でも新作と出逢え、同じように舞い踊りました。 が、そちらからはなぜか拍手コメが送信できないため、ご無礼承知でここからお伝えしてしまいます。 (多分、こちらのPCの不調によるものかと思いますが) こちらも本当にありがとうございます。これからも楽しみに待っています。
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