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「……ごめんな、Dr。俺のわがままを聞いてくれてありがとう」 「……いいえ……」 石川が深く頭を下げると橋爪は先ほど拒絶しかけた石川の手を取った。 「石川さん……言いにくいことを言わせてしまってごめんなさい」 「そんなことはない。ただ、今のままじゃ、Drも中途半端に仕事が気になって休めないだろうし……でも、休職するだけで、ここにはいていいんだからな? むしろここにいて欲しいし……その……」 「石川さん、大丈夫です。石川さんが気に病むことは何もない……」 言いよどむ石川に橋爪はわずかに笑みを浮かべた。祈りを捧げるかのように石川の手をぎゅっと握ると、ゆっくりとその手を解放した。 「……西脇さん。すみませんが、三浦医師を呼んできてもらえますか?」 「それなら、俺が」 「西脇さん、お願いします」 岩瀬が立ち上がりかけたのをそっと制し、橋爪は縋るように西脇を見上げてきた。 「……分かった」 きっと、自分抜きで石川と話したいことがあるのだろう。もしくは先に自分の方から三浦に話すのを待っているのか。あるいはその両方か。 医務室へ入ると、退勤の準備を済ませた三浦がいた。今夜の夜勤は看護師の誰かのようだ。 「帰るところだったみたいだな」 「いいよ、少しくらいなら……座って」 「いや……Drが三浦医師をお呼びだ。それを伝えに来ただけだ」 「西脇さん、ちょっと待って」 そのまま医務室を出ていこうとした西脇の手を慌てたように三浦が引いた。 「僕に話? Drが?」 「他にはないだろ」 三浦の手を振り解いて振り返った。 「そうだけど」 「石川達もまだ病室にいる。休職の件なら、さっき、石川が話してくれたよ……Drも承諾した」 「……そっか」 わずかに目を伏せ、三浦は小さく息を吐いた。あたかも心外で承服はしかねるが仕方ないとでも言いたげな仕草。 「分かってたことだろ。Drがそれを受け入れるしかないってことも……実際、医務班でもその準備を進めていたんじゃないか」 「……ああ、そうだよ。Drがどういう気持ちでいようとも、そのつもりではいた。これでいい?」 そして、挑むように西脇を見てくる。 「別に、言質を取るつもりで言ったんじゃない」 それに、西脇としても三浦に絡むつもりでもない。ただ、行き場のない思いがぐるぐると渦を巻いているだけだから。 「……じゃ、そういうことで。Drの病室に行ってくれ」 「わかった」 三浦を置いて、そのまま寮の部屋に戻った。 キャビネットからブランデーの瓶を取り出すと、グラスを用意するのももどかしくそのまま煽った。強めのアルコールが喉を、次いで胃を焼きながら流れていく。繰り返しても、酔いは一向に西脇のもとへは訪れてこなかった。 半分以上残っていたはずの中身を全て飲み干し空になった瓶を放り出すと、ソファにもたれた。ただ宙を睨みつけていると、ポケットの中の携帯が振動しだした。取り出しのろのろと耳に押し当てる。 「……西脇だ」 『西脇? どうした? どこにいるんだ?』 聞こえて来たのは先ほどまで一緒にいた石川の声だった。 PR この記事にコメントする
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