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082

 
 夜が明け切ったころ、メディカルルームに篠井がやってきた。
 ほんやりとした思考の中で、西脇は辛うじて起き上がると篠井を迎え入れた。
「……ほとんど休めていない顔色ですね」
 わずかに苦笑めいた笑みを浮かべて、篠井は西脇を見てくる。
「……休みはした」
 そういえば、麻酔の影響は抜けたのか。吐き気を伴う頭痛はほぼ治まっていた。
「西脇さん。あなたらしくない、と今回のことを叱るのは簡単ですが」
 篠井が言葉を選びながらゆっくりと口を開く。
「それだけの理由があったのだとは思います」
「……いや」
 西脇は篠井の言葉を遮った。
「理由なんかない」
「え?」
「……単にキレただけだよ。今時の若者と同じように、覚えてもいない程度の些細な言葉にキレて、つい、暴力を振るってしまった。それが真実だ。理由なんてどこにもない」
 言い訳や自己弁護はしない。保身を図るつもりもない。
「事実は事実だ。処分は全て甘んじて受け入れるつもりだ」
 だからもう、誰の言葉を受け入れるつもりもないから。
 篠井はまじまじと西脇の顔を見つめ、小さく首を振った。
「……では、あの時何があったのか、聞いても構いませんか? あとで、どちらにせよお話していただくことにはなりますが」
「それは、あんたたちの方が分かっていることじゃないのか?」
 西脇はベッドの上で居住まいを正し、篠井を真っ直ぐに見やった。
「映像で確認できることなどごく僅かです。私はその時の西脇さんの気持ちが」
「知ってどうするんです? だからと言って、どうにもならないことなど、篠井さん自身がよく分かっていることでしょう。元より委員会寄りなんだ。目に見える、そして記録された事象が全て。それでいいんです」
 ただ淡々と言葉を口にした。感情などどこかに消え去ったかのように、そこにはどんな感情も介在していなかった。
「少しでも処分を軽くしたいんですよ。それにはあなた自身の証言が必要なんです。分かっていますよね?」
「……あんたもここの空気に随分と毒されたようだ。委員会には……宮沢さんには、どんな言い訳も通用しない。大人しく叱られることにするさ」
「分かっているなら尚更ですよ」
 呆れたように呟く篠井に西脇は首を振った。
「だからだよ、篠井さん。分かっているからこそ、自分の言い訳はしない。自分を正当化したくはない。どうせ、ここの話も石川に伝えるんだろう? だから、あんたに言っておく。俺の代理、または後任は羽田に任せる。外部からヘルプを呼ぶ必要はない。羽田なら十分に独り立ちしてもやっていける」
「……それは、除隊するということですか」
「……委員会がそれを決めたのなら、それに従うということだ。それ以上もそれ以下もない」
 西脇はそれきり口を噤んだ。これ以上話をしても堂々巡りのまま何の進展もないだろう。
 しばらくの沈黙の後、篠井は立ち上がった。
「……あとで、私かマーティが迎えに来ます。それまでに食事は済ませておいてください」
 じろりと見やると、篠井は小さくため息をついてしまった。
「……朝早くからすみませんでした。では、失礼」
 小さな溜息をついて篠井はメディカルルームを出て行った。ドアの外で誰かとわずかに会話を交わし。そして篠井の足音は消えていった。
 西脇はベッドから降りると窓を開け外を見やった。早朝独特の少しひんやりとした空気が流れ込んでくる。エアコンの人工的な冷気よりはずっとましだった。

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