[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
最新記事
083
(03/01)
082
(10/08)
081
(01/19)
ご意見・ご感想
お返事
Powered by NINJA TOOLS
※名前なしでも送れますw
忍者ブログ | [PR]
テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



078

 結局のところ、橋爪の復職が堺に認められたわけではなく、そのまま無期限の長期休暇を取得することになった。石川の進言通りに、病室を居室として。
 その方が西脇としても安心はするし、橋爪の方も一人無為のまま自室に籠もることもない。時折は事情を知るわずかな隊員たちも見舞うことができるから。西脇にとっても橋爪にとっても、最上ではないかもしれないが取りうるベストに近い選択肢の一つとして。
 ただ、橋爪への依存は自分でもどうかしていると思うほどに、日に日に酷くなっていく。
 ただそこに橋爪がいればいい。そうすれば自分は自分としてまっすぐに立つことができる。その白い部屋にさえ居てくれるのならば―――
 こんなふうに、橋爪を籠の中の鳥のように扱いたいわけではない。橋爪を一人の男としてみるのなら、絶対にありえないことだ。こんな軟禁状態を橋爪の意思を無視してでも強要してしまうのは、結局のところは自分自身が安心するからという身勝手な理由にしか過ぎない。
 この奇妙な状態が周囲に訝しがられてはいても黙認されているのは、西脇こそのそんな状態が理解されてのことなのだろうから。


 無理をすればどこかに綻びが生じる―――それは当然のこと―――


 いつものようにテロリストの襲撃の報に討って出たのは覚えている。
 ふと気づけば目の前の男たちを暴力で叩きのめし、銃口を突き付けていた。男の絶叫と、僅かに遅れて自分の手から銃がもぎ取られた痛みに、一瞬でも気を取られなければ発砲していたかもしれない。
 目の前の男がさらに声高に何やら叫ぶ。
 西脇はそれを蹴りつけ地面にねじ伏せたところ、自分の体に衝撃が走り反対に何故か取り押さえられていた。
「放せっ」
「待って。いいから、落ち着いて」
 少し英語なまりのある言葉はグレイのもの。そして、引きずり起こされた先に見えたのは自分の上司でもある石川の顔。とすれば、自分を押さえつけているのは岩瀬か、グレイか―――
「落ち着いている」
「いいから!」
 耳元で聞こえた制止の声に、自分を押さえつけているのはグレイかと確信した。
 ちゃんと現状を把握するだけの冷静さならある。それでも、目の前の言葉の形すら取っていないテロリストの叫びを聞いていると、体のどこか奥深くからふつふつと湧き上がってくるものがある。
 ―――犯罪者。
 ―――テロリスト。
 いろんな呼称はあれど、法を犯した人間には違いなく。
 そして、なにより。
 こういった男たちに橋爪は辱められたのだ。己の非を正当化し、権利を主張する男たちによって。
 もがき、僅かに緩んだ手の中から、西脇はさらに殴打を加えようとした。だが、それは寸でのところで阻まれ、肩口に重い衝撃が走った。見れば銃を構えた岩瀬が立っていた。横にいた石川までもが厳しい表情を浮かべている。
「……な……で……」
「なんなんだよ、そのケービイン!」
 男がさらに叫びだす。騒音めいた声に、余計にグラグラとした感覚が西脇を襲う。
「……二人を連れていけ」
 固い声音で石川がやっと言葉を発した。
「……石……?」
 意識がゆっくりと途絶えていき、ぐらりと体が傾いだ気がした。それでも地面に倒れこんでいないのはグレイがこの体を支えてくれているからか。
 目に映ったのは、視界いっぱいに広がる真っ赤な空だった。落日の時刻も近いのだろう。まるで血で染め抜いたような空の色だった。
 たぶん、橋爪が絶望の中で見上げたのと同じ空の色なのかもしれない。
 赤く紅い空の色―――

拍手

PR


この記事にコメントする
HN:
TITLE:
COLOR:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS:
<<077 | HOME | 079>>

Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright [ Sillygames ] All Rights Reserved.
http://westbridge.blog.shinobi.jp/