[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
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077
「……医務班の誰かを呼んで病室に戻ってくれないかな……それが俺も一番安心する」
「それは……」
 橋爪の顔など見なくても分かる。きっと、このところ橋爪が浮かべるようになってしまった、意に染まない時の僅かに引き歪んている笑みすら消し去ったあの顔だ。
「さっき点滴はしてもらったし、少し休めば落ち着くから。ほんとに、ごめん。今夜だけだから……」
 橋爪を拒絶する。受け入れがたく思ってしまう。
 多分、今の不調がそんな気分にさせているんだとは思う。分かってはいても、自分ではどうしようもないことだから。
「……わかりました」
 ひんやりとした手で橋爪は西脇の頬を撫でた。掠るだけの小さなキスをその頬に落とすと、無言のまま部屋を出て行った。
 一人きりで。
 たった一人きりで戻れるというのか。
 慌ててソファから起き上がり、ぐらりと襲ってきた眩暈にソファの座面にうずくまった。必死で背もたれにしがみ付いて呼吸を整えると、僅かに復調してくる。
 外しかけていたタイを抜きテーブルの上に放り投げると、僅かによろめきながらもドアにたどり着いてドアの開閉ボタンを叩いた。微かな機械音がしてドアが開き、隊員たちの出すいろいろなざわめきが一気に流れ込んでくる。足音だったり、微かなしゃべり声だったり。普段は気にもならないそんな物音すら、ガンガンと西脇を苦しめる。
 橋爪がどちらへ行ったのか、その気配を窺おうとし、ぎょっとして足元を見た。そこにはドアの傍らに座り込んで俯いた橋爪がいたから。ドアが開き西脇が出てきた気配に、橋爪はのろのろと顔を上げた。
「……何しているんだ、こんなところで」
 溜息をつきつつ、西脇はガシガシと頭をかいた。心のどこかがひどくイラついてくる。
「……それでも、心配で、その、私……」
 言いかけた橋爪の語尾がどんどん沈んでいく。
「Drは、他人の心配をしている場合じゃないだろ」
 座り込んでいた橋爪の手を引き、強引に廊下から立ち上がらせた。
「あの」
「廊下に座っているくらいなら部屋にいろ」
 西脇は橋爪の手を引き、部屋の中へと促した。それでももじもじと入り口近くで立ち尽くしている橋爪の背を押し、ベッドへと座らせる。
「……泊まっていくの?」
「……迷惑でなければ……」
「……別に。ここはDrの部屋だし、いちいち許可を取る必要はないだろ」
「……それでも……」
 尚も何かを言いつのろうとする橋爪を西脇はベッドに押し伏せた。
「西脇さんっ!?」
 暴れかけるその体をそっと抱き込むようゆっくりとベッドへ横たわった。そのまま、ただゆっくりとその体を引き寄せ、その肩口へと顔を埋めた。
 西脇の意図はわからずとも、その西脇の苦しさは分かるのだろう。橋爪は西脇の頭を抱え込むようにゆっくりと腕を回してきた。
 ただの優しい抱擁。
 疲れた心と体を癒してくれる、何よりのものだった。
 ただ、このまま、抱きしめていてくれればいい、いつもと変わらぬおおらかな優しさの中で。そうすればきっと、自分もその腕の中で眠れるだろうから。
「……紫乃……」
「はい」
「……そのまま、そっと抱いていて……?」
「はい」
 ゆっくりと瞼が重くなってくる。いつもならまだ眠ることなど考えもしない時間なのだが、先ほどの薬がまだ残っているのかもしれない。
 橋爪に抱かれた手と、そっと髪が好かれる優しい感触がさらに眠気を誘ってくる気がする。
「……お休みなさい、西脇さん」
「……ああ……おやすみ……」
 いつからここまで橋爪に依存するようになってしまったのか。それでも、この腕の中はこれほどまでに安らげるのだから。
 暖かな温もりの中で西脇はゆっくりと意識を手放した。

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