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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
自分でも頑なになっているのは分かる。だが、全てを受け入れるとはいいつつも、自分の感情の中では唯々諾々と己の非を認めることはできなくて。
きっと今日も石川はだんまりを続けることだろう。決まったことを淡々とと口にするだけかもしれない。 だが、真っ直ぐに向き合って手を差し伸べようとした石川の気持ちを拒絶したのは他ならない自分だから。救いの手は橋爪へこそ差し伸べられるべきものであって、決して自分へ向けるべきものではないから。 「すみません、西脇さん」 部屋の外からから声がかけられ、そっとドアが開かれた。 「……ああ……」 「朝食を持ってきました」 「……悪いな」 村井はゆっくりと首を振った。 「昨夜はあまり食べられてませんから、お腹も空いたでしょう? 足りなければ、また作ってもらいますから」 「……ずっと寝ていたから、たいして空いてもいないよ。すまないな」 「……いえ。じゃあ、ここに置いておきますね。後で片付けに来ますから、そのままにしておいてください」 「……ありがとう」 僅かに笑んで、西脇は村井を送り出した。 机の上には西脇が朝から好んで食べるサンドイッチと温野菜のサラダ、そしてスープ。すべては西脇の疲れた心と体とをいたわるかのように準備されたのだろう。岸谷もそれに一枚噛んでいるに違いない。 ゆっくりと手に取って口に運ぶ。美味くないとは言わない。平素の自分なら、食べなれたその味にすぐさまに完食してしまうことだろう。だが、皆の厚意が垣間見られた時点で、それを重荷に感じてしまう自分に嫌気がさす。 まるで砂を噛んでいるかのような味気ない食事を早々に終わらせ、再び窓の前へと立った。 メディカルルームの窓からいえる風景はいつもと全く変わりはない。青々とした木々の色も、合間からうかがえる外警の隊員たちの様子も何一つ変わりはない。変わったとすれば、自分自身の気持ちだけ。 まっすぐに向けていた仕事への情熱が、歪んだ形で自分の中で渦を巻いているかのようだ。自覚はあるが、それでもそれをどうすることもできなくて。 目の前に橋爪がいれば話は違うのかもしれない。彼の存在が、自分の善意でもあり良心でもある。だから。 「西脇さん? 用意は済まれましたか?」 「用意するものなど何もないが」 顔を出した村井へそう告げる。実際ベッドの傍らに置いたベストを羽織り、乱れた制服を直すだけなのだから。 「トイレには行きたいかな」 「そうですよね。少し待ってもらえるようにしますね」 そういって、村井はどこかへと電話し、部屋から出るよう促された。 本当ならシャワーでも浴びてスッキリしたいところなのだが、それを告げるのも億劫だった。 無精髭と寝乱れた制服のまま他人の前に姿を現すということ。少し前までの自分なら考えもしないことだった。 用を足し、ついでに洗面所で顔を洗い口を濯いだ。 それでもすべての気力を使い果たしてしまった気がする。 「おはようございます、西脇さん」 トイレから出ると、そこにはマーティが待っていた。 PR
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