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080
B室のドアを開けると、ぴりぴりと張り詰めた空気が西脇を包む。中には退勤したはずなのに、未だ制服に身を包んだ石川、岩瀬と篠井、マーティがいた。
「……これはまたお揃いで」
 これ以上口を開けば嫌味めいた言葉しか出せなさそうで。西脇はぐっと拳を握りしめ口を噤んだ。
「……西脇」
 石川がゆっくりと口を開いた。その視線はまっすぐに西脇に向けられている。
「覚えているか?」
 決して言葉は多くない。それでも補足する必要のない疑問だけがまっすぐにぶつけられる。
「……いや」
 経緯も結末も何も記憶はない。だから、西脇は曖昧に言葉を濁すことしかできない。
「何があったのか聞いても無駄か?」
「……そうだな。きっと、俺よりはお前の方が状況も把握しているだろうしな」
 覚えているのは極僅かなことだけ。だが、そんな記憶の断片を繋ぎ合わせればおぼろげながらも見えてくる全体像はある。それで察している状況は決して愉快なものではないから。
「それでも……まずは、申し訳ありませんでした、と詫びるべきか」
「覚えていないことに謝罪されても意味はない」
 石川によってバッサリと切り捨てられた。
「……ま、そうだろうな」
「西脇」
 西脇は石川を真っ直ぐに見下ろした。
「委員会にも報告が上がっているから、おそらく査問されるだろう」
「……ああ、そうだろうな」
「先刻、テロリスト捕縛の際に必要以上の暴力行為があったのだと、テロリスト側から弁護士を通じて申し入れがあった。テロリスト側から、というのは本末転倒ではあるが、それでも犯罪者に対しても許される行為ではないことは事実だ。実際、あちらから診断書を提出されれば、それを受理するしかない」
 石川の唇の動きに、西脇も視線を合わせる。
「……よくて始末書と謹慎。下手すれば減棒か、休職。一般人相手ならともかくテロリスト相手だったから、退職はさすがにないだろうとは思うが。今夜は目覚めていないということで、委員会の動きは抑えてあるが、その分だけあちらにも検討する時間を与えてしまったようなものだ。明日にはおそらく何らかの決断を持ってここに来るだろう」
 石川の口調は淡々としていた。
「……これまでが忙しすぎたんだ。しばらくここで大人しくしていろ」
「……どういう意味だ」
「何らかの結論が出るまで、ここで謹慎していろ」
 さっきから出てくる「ここで」という言葉。そのこことは、いまいる、この場所、ということなのか。
「ちょっと待て」
「待つも何も、言葉通りの意味だ。医務室で大人しくしていろ。明日、誰かを迎えによこす。篠井もそのつもりで頼む。行くぞ」
 石川は無表情のまま岩瀬を連れて医務室を出て行った。僅かに頭を下げて篠井が石川を見送り、そして西脇へと向き直った。
「西脇さん、とりあえず今は体を休めることを考えて下さい。Drの食事は先ほど池上が運んでいきましたし、夜勤の看護師もいます。Drなら大丈夫ですから」
「……篠井さん」
「すぐにも飛んで来ようとする委員会側を抑えるのに隊長も必死でした。少しだけ気が立っているのはその名残でしょう。詳しい話はまた改めてしましょう?」
「……分かった」
「では、また明日来ますから」
 A室の扉が無情にも閉じられ、そして施錠される音がした。すぐに静寂が戻ってくる。
 ここで謹慎ということが、暗に橋爪への接触も禁じられたのだということ。だからこそ、篠井までもが釘を刺すかのように心配はないと告げていったのだろうから。
 橋爪の痕跡の残るこの場所で、なにより主の存在のない冷え切ったこの場所で。無為の時間を過ごすことは、この上もない苦しみとなって西脇の上にのしかかってくるのだった。

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