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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
「……そろそろ行く」
西脇は立ち上がった。少しの頭痛がする他は、それなりに復調したようだ。実際のところ、それなりに熱中症にはなっていたのかもしれない。 「西脇さんなら分かっているだろうし、今更言うことじゃないけどさ。汗かいたらちゃんと水分は取ってね」 「分かっている。うちの班員達にも再度伝えておくことにしよう」 三浦の言葉にあえて核心をはぐらかして。自分の不調を自覚してしまったら、もう動けなくなるだろうから。 「Drの病室で待っている」 ただ、石川に沿う告げチーフルームを後にした。食堂にいる隊員達の視線が全て自分に向いていると感じてしまったのは気のせいではあるまい。 ギリギリの状態のまま病室へたどり着くと、そこは無人だった。ベッドの上は完全に冷えきっており、長いことそこが無人だったことを示している。何より、食事を運んでいったはずの池上の姿もなかったから。 橋爪が一人で出かけるはずもなし。きっと池上も一緒にいるはずだろう。 池上の携帯にかけるとすぐに応答があった。 「はい、池上です。お疲れさまです」 「お疲れさま……おまえ、今、どこにいる?」 「あ……」 気まずげな池上の沈黙。それで橋爪が一緒なのだと確信した。 「池上」 「……あの、メディカルルームです」 「わかった」 おそるおそる告げた池上に、西脇は通話を断ち切ると深いため息をついた、 そのまま階下のメディカルルームへと向かい、閉ざされたままだったはずのドアを開けた。中にいた池上がいち早く西脇の姿を認める。 「西脇さん……お疲れさまです」 「ああ、お疲れさま。それで?」 「あ、はい。いつもより少しは召し上がってくださいました」 「……そうか」 テーブルの上には僅かに手の付けられただけの夕食の盆が乗っている。 「まあ、さっきの今じゃ、たいして腹も減っていないだろうしな」 橋爪の姿を認めつつも、橋爪の話題を橋爪抜きで交わす。こんな不自然な状態に橋爪が俯いた。 「池上、悪かったな。岸谷にはちゃんといっておくから」 「構いませんよ……では、失礼します」 池上が頭を下げメディカルルームを出ていく姿を見送って。そんな西脇を見てた橋爪は、西脇が見やると怯えたように身を竦めた。 「石川達と……」 「……あ、はい」 「岸谷の部屋で話していた。池上から聞いたと思うが」 「……はい。お疲れさまでした……その、怪我とか……」 「うん、していない。大丈夫」 「そうですか……よかった」 先ほどテロの報告を受けて、昼飯もそこそこに飛び出していったから、橋爪なりに自分のことを案じてくれていたのだろう。 「紫茉さんは?」 「先ほど帰りました。また来るって……」 「そうか。よかったな。紫茉さんも紫乃の顔を見たから安心してくれただろうし」 西脇はいつもの椅子に腰を下ろした。つられたように橋爪もまた自分の椅子に座る。 「……ここに来るのも随分と久し振りな気がするね……」 「ええ、そう……」 足の上で組み合わされた橋爪の指が落ちつきなく動く。 「あ、あの」」 「……ん?」 「いえ……」 「いつから正式復帰?」 西脇の言葉に橋爪が固まった。目をきつく閉じ、体と強ばらせたまま下を向く。 「紫乃?」 「……ごめんなさい、ごめんなさい……ごめ……」 ひたすら謝罪の言葉を口にして、橋爪は西脇のことを見ようともしなかった。 PR この記事にコメントする
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