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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
「……わかった。病室で待っているよ」 そういうしかないだろう、この場合は。石川と三浦に頭を下げ目を伏せた。 一緒にいるクロウや岩瀬も何もいわないところを見ると、きっと同じ気持ちのはずなんだろう。 岩瀬がすっと立ち上がり、部屋を出ていくのと同時に岸谷が入ってきた。 「西脇が起きたって?」 だから、顔を出したに違いないのに。 「すぐ代わりの飯を持ってくる」 「……いや、岸谷、飯はいいから」 「持ってくる」 岸谷もぐるだったんだろう。岩瀬がすぐに運んできて西脇の前に盆を置いた。きっと用意されていたのだろう。 自分が倒れたことなど、岸谷にはすぐに伝えられたのだろう。第一、三浦が白衣姿のままでチーフルームには行っていけば、何かあったのだろうとは何も知らない隊員でも思うだろうし、まして聡い岸谷ならなおさらのことだ。 椀の蓋を開けると、中にはシンプルな卵粥がはいっていた。 「西脇、フーフーして食わせてやろうか?」 クロウが笑いながら言ってくる。 「……自分で食える」 匙でひとすくいゆっくりと口に運ぶ。先ほどのカレーような拒絶反応は起こらない。胃の中のものを全て吐き出したために楽になったのか。 ただそれでも数口で限界だと悟り、匙をおいた。今度は石川は何も言わなかった。 「……これでいいな?」 「ああ、そうだな……」 石川がようやくOKの言葉を出す。 「あーあ、しばらく西脇とは酒は飲めないか」 クロウが残念そうに呟きソファにもたれる。 「……浅野と飲みに行けばいいだろ」 「あいつと飲んでもおもしろくはない」 ばっさりと恋人のことを切り捨て、クロウは西脇に向かった。 「いっそDr誘って出かけようかな」 「まだ無理だ」 「無理だと思ってんのは西脇だけなんじゃない?」 西脇にしなだれかかってくるクロウの体を押し退けて。 「Drにちょっかいをかけるのはやめろ」 「そんなに過保護にしなくてもいいだろ」 「過保護じゃない。ただ、今、Drは」 「もういいから、西脇さん。クロウさんも分かって言ってるんだと思うし」 分かってやっているからこそ質が悪い。だから腹立たしいんだ。三浦には何故分からないんだ。 三浦のまっすぐな性質は人間としては美徳なんだろうが、もう少し状況を見て言動を判断することを覚えた方がいいのに。三浦には何を伝えても結局は伝わらないんだろうが。 「……そういえば」 無理にも話の方向性をずらして。 「クロウ、お前には礼を言わなけりゃ、だったなと思って」 襲われる橋爪を最初に見つけたのはクロウだったから。クロウが爆発物を処理しながらでも橋爪を見つけてくれたから、最悪の事態は免れたんだろうし。 「礼は形にしてくれる?」 クロウはおどけてそう西脇の言葉の受け取りを拒否してきた。 「別に、西脇に礼をいわれることは何もしてないけどね」 「……そうか」 礼を言われることではなく、当然のことだからとクロウはいっているんだろう、きっと。 クロウには落ち着いたら何か菓子でも買って渡せばいい。そして、他の連中にも…… 「Drが落ち着いたら、同期で飲み会。それでいいか」 「いいな。ビアガーデンにでも行くか?」 「そん時は宇崎も呼ばなきゃ拗ねるだろ」 石川とクロウがそれに便乗してくる。 何も言わなくても通じること。知られたくないことまでも感じ取られてしまうにしろ、それでもその存在はありがたい。 PR この記事にコメントする
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