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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
「岩瀬くん、西脇さんをソファに寝かせて」 それでも体の方は限界にも近かったから。抵抗を諦めソファにそのままぐったりと埋もれた。 「西脇さん、吐き気だけ? 頭痛とかはない?」 「あーはいはい。ハメられたってわかって頭が痛いよ」 「そうか……頭痛も、なんだね」 三浦はこれ見よがしに溜息をつくと、西脇の腕をとった。生温かな人間の体温が、嫌悪感に振りほどくほどではないものの気持ち悪く感じてしまう。脈を測っているのかしばらくじっと時計を睨んでいた三浦は、ゆっくりと部屋の中を見回した。 「ひょっとしなくても、今日、少し長めに外にいたりしたよね……ああ、そこのハンガーポール、借りようかな」 そして、西脇の横に膝をつき、再び腕を強引に掴み取った。 「どういうつもりだ」 西脇は三浦の手を振りほどくと、そのまま顔をにらみ上げた。 「うん、軽い熱中症と脱水症状。少し点滴して様子見るよ」 「―――水分を取ればいいだけの話だろうが」 「そうだね。そのままベッドで休んでくれるんなら、それで問題はないけど、西脇さんはそうもいかないだろう? 点滴した方が回復も早いよ」 いいように丸め込まれている感も否めないが、確かに今、ここで寝込むわけにもいかないだろう。 「点滴は2、30分くらいで済むから」 深いため息とともに、西脇はおとなしく腕を差し出した。疲れてなどいないと思い込もうとしていたが、実際、先ほどの嘔吐で疲れを自覚してしまった。 ちくりとした針の痛みとともに広がる筋肉ごと押さえつけられるかのような痛みが腕全体に広がっていく。何かを話していた気もするが――― 石川の声に、ふと沈みかけていた意識が浮上した。 「……寝てたのか」 「ああ、10分くらいだな」 窺い見た部屋の時計も大体それくらいの経過時間を示してはいた。 「……そうか」 西脇は溜息をつき、自分の腕を見た。腕から伸びたチューブの先には薬液の入ったバッグがコート掛けにかかっている。 「……即席だな」 「利用できるものは何でも使うよ」 三浦が組んでいた腕をほどき、苦笑した。 「無理するなとは言わないけど、でも自分の体のエラーサインには無視しないでほしいかな」 「別に、無視をしているつもりはないが」 「それならそれでいいけれど」 三浦は苦笑した。 「そろそろ点滴も終わるね」 「……ああ」 西秋は体を起こした。腕を伸ばすと渋々といった風に三浦が針を抜きパッドを当てた。 「このまま部屋に戻って休んで、といったって、聞かないんだろうなぁ、君は」 「休むほどのことじゃないだろ。少し寝たらすっきりした」 「休むほどのことだろうが」 呆れたように石川がいうと、西脇は僅かに唇の端だけを釣り上げた。 「軽い熱中症だと三浦医師も言いましたよ。外警の職業病みたいなものです。以後気を付けますよ、隊長」 それ以上、自分の話は続けたくなかったから、あえて上司と部下という立場をとって。点滴を外して片づけをしていた三浦を見やって、三浦にも再び座るように促した。 「さっきまで外を巡回していましたので、そのせいでしょう。心配をおかけしてすみませんでした」 そのまま居住まいを正して。きっと、こうすれば容易には踏み込めないはずだから。 ずるいのだ、ということは自分自身がよく分かっている。それでも何人たりとも踏み込ませたくはない、心の内まで晒したくはない。 PR この記事にコメントする
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