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「宮沢さんは、Drと親しいのは俺ではなくおまえだと思っている」
西脇は石川をまっすぐに見つめた。 「それはそれでいいんだ」 宮沢は石川と岩瀬の関係を承知しているだろうから、橋爪と石川との関係を変に邪推されることもないだろう。ただ、それを素直に口に出せないだけだ。 「ひょっとしてさ……」 三浦がゆっくりと口を開いた。 「Drに、退職勧告でも出た?」 三浦の目からしたら、それが妥当な見解なのか。 「いや、そこまでは……三浦医師、堺医師が代替の臨時医師を手配すると言っていたけど」 「うん、そうだよ。現状から見て、Drの今すぐの復帰はちょっと難しいし。数日ならともかくね。しばらく様子を見ようということになって」 「……今の様子じゃ仕方ないのかな……Drがいないのは寂しいが」 石川がぽつりと呟く。橋爪の存在がこんなにまで深く、当たり前のように石川の心の中に存在しているのか。 「それは三浦医師も同じ見解だと?」 「身体的には問題ないよ。普通の人と同じように生活していいって、何度もいったよね……ま、絆創膏がちょっと邪魔だけど、それは問題ないし」 小さく三浦がため息を重ねる。 「ただ、精神的にはちょっとね……健診だけなら問題ないだろうけど、それだけじゃないだろ、Drの仕事」 今までの内科医ではなく、Dr橋爪としての仕事。ただ座って健診のデータを入力し分析するだけで時を過ごすのではない、隊員一人ひとりと向き合い共に生きるという彼にしかできない仕事。その仕事を尊重しているからこそ、そして橋爪もその仕事にプライドを抱いているからこど、今のこの現状がとてつもなく苦しい。 結局のところ、自分も含めて誰もが今の橋爪に診療を任せることはできないと思っている。 そして、それは橋爪自身が一番わかっていること。 「三浦医師のお察しの通りだよ……さっき、宮沢さんからDrに対して長期休暇を取るように勧めろと要請があった。宮沢さんはDrと親しいのは石川だと思っているらしく、俺からそれを勧めるようにと」 「じゃあ、退職を勧められたわけではないんだな?」 畳みかけるように石川が問いかけてくる。 「ああ……」 「よかった。Drにはここにいて欲しいからな、俺も。俺が病気になったときも、Drがうちまで来て後押しをしてくれたから、ここに戻ってこれたようなものだし。こんなことくらいでDrを切り捨てたくはないんだ」 「……折を見て、Drには話そうと思う。ただ、その前に他の人間の見解も聞いておきたかった」 これで決定したも同然か。 「……西脇。それこそ、宮沢さんの言葉を借りる訳じゃないけど、俺から休暇を勧めても構わないぞ」 「……石川?」 「お前からだと角もたつだろうし、お互いに感情的にならないとも限らない」 「は? 俺が?」 「今の西脇だから」 石川はゆっくりと言った。 「どんな時だってお前は冷静だし、頼れる奴だとは思っているよ。でも、Drに関してだけはほんの少しだけ冷静さも欠ける。Drは俺にとっても大事な親友だ。隊長だからとかいう以前にな」 「……そうだね。西脇さんはむしろ、Drのフォローに回る方がいいんじゃないかな。下手したら、警備隊から拒絶されたと思ってしまうかもしれないし」 三浦までもがそんなことをいうのか。しかし、石川がそう言い出してくれるのを、心のどこかで期待してはいなかったか。 「Drも仕事を忘れてしばらく休めば、きっと仕事がしたくてたらなくなると思うしね」 「だったら、決定だな。後で病室に行こう。お前は一緒にいてくれればいい」 自分が決断を下す前に、石川がそう決定づけた。 PR この記事にコメントする
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