[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
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062

 監視室のドアが突然開き、滅多にここを訪れることのない顔が現れた。さっきまではモニターの向こうであれこれ作業を行っていた爆班の副班長だった。
「お邪魔するよ」
 いいとも悪いとも返事をする前にクロウはさっさと入ってくると、西脇のデスクの前にスタスタと歩いてきた。
「……事後処理、もう終わったのか?」
「終わったよ? 報告書は解析のデータ待ちだし」
 それならばいつものようにさっさと食堂に行って浅野に甘いものでも強請ってくればいいものを、どうして爆班とは反対に位置する外警監視室まで訪れるのか。
「せっかく帰国したんだからさ。たまには飲みに出よう? な?」
 この、今の状況でのんびりと出かける気分になどなれるものではない。それはクロウにも分かっているはずだ。
「……断る」
「いいじゃないか。いろいろ話すことだってあるだろ? 西脇、そうだろ?」
「……俺にはない」
 クロウから目を逸らし、ぼそぼそと応じた。
 クロウの話なら察しはついている。だけど、それを聞きたくはない。石川に見せられたあの映像だけでもう十分だ。これ以上、恋人の傷ついた姿なんて見たくはない、聞きたくはない。
「たまには一緒に飲もう? なあ、西脇」
 肩を抱きこまれ耳元で囁かれると、ぞくりと背中を冷たいものが走っていった。
 クロウがどうこうしたわけではない、ただ他の人間に触れられるというだけで感じる嫌悪感。
「……クロ、離れろ」
「……やだね」
「離れてくれ……」
「西脇……?」
 クロウが僅かに離れると、西脇はゆっくりと息を吐き出した。ただ、先ほど不意に浮かんだ嫌悪感が完全に払拭されたわけではない。
「……見ての通り、手が放せないんだ。また、そのうちにな」
 普通なら、それでとりあえずは引き下がるが、クロウは何もかもを見透かすかのように深い色の瞳で西脇の目をじっと覗き込んできた。
「……クロウ?」
「……目が赤いな」
「……寝不足なだけだ。ほら、もう、いいから、爆室に戻れ」
 目の前の体を僅かに押しやり、西脇は立ち上がった。そして、デスクの後部にあるキャビネットから書類を引き出した。
 背中にじっと注がれる悪友の視線が痛いほどに突き刺さる。
「お疲れ?」
 もう話すことはないと無言でその視線と言葉をを無視して、羽田のところに歩み寄った。
「さっき言っていた報告書は出来上がったのか?」
「再度確認したら完了の予定です」
「完了したら、そのままこっちに回してくれ」
 完全にその姿を無視して業務に戻ろうとしたとき、ぐいっと肩を掴まれた。ぞくりと走る嫌悪感。さっきのは決して気のせいなんかじゃなかったんだと西脇に現実を突きつける。
 慣れたクロウの手にすら感じる悪寒。今までにはなかったことだ。
「無視するんじゃないよ、西脇」
「……忙しいと言っただけだろうが。さっさと出て行け。じゃないと、力づくでも追い出すぞ」
「はいはい、怖い班長さんだ」
 笑うクロウに西脇は顔を背け、肩を掴んだままのクロウの手を叩き払った。
 クロウは僅かに溜息をつくと、羽田たちに声をかけて監視室を出て行った。
「西脇さん、よかったんですか……?」
 クロウの傍若無人っぷりには慣れていても、どこか不穏な空気を漂わせた先ほどの応酬には羽田たちも戸惑いを隠せないでいる。
「気にするな。いつものことだ」
 それだけを口早にいうと、再びデスクに戻った。



 羽田を先に上げ、その後は羽田の代わりにモニターを監視しつつデスクワークに付っきりだった。
 どんな状況であるにせよ、仕事が西脇の状態を慮って待っていてくれるわけではない。
 途中、紫茉の帰宅が告げられ、西脇は重い息を吐き出した。
 紫茉が苦手なのではない。それでも平時ならともかく、今のこの状態で紫茉に直接応じるのは精神的に重荷にも感じていたから。
 多分、橋爪のことをきちんと伝えることもできずに曖昧に接している、その負い目が余計に重荷へと感じているのかもしれないが。
 溜まったデスクワークを片付けると、さすがに定時を過ぎてはいた。
「……上がる前に、一度、巡回に出る」
 重い頭を振って、西脇は立ち上がった。
「了解です」
「何かあったら、連絡しろ」
 外していたインカムと麻酔銃を着け、監視室を出た。そして、そのまま外へと出る。
 むっとする熱気が、西脇を押しつぶすかのように一気に押し寄せる。
 それぞれのゲートを回り、班員たちと言葉を交わして歩く。それだけのことしかできなかった。

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