[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
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022

 朝礼のあと軽く他の班長達と情報交換して別れると、まっすぐに橋爪のいる病棟に向かった。
「西脇!」
 足早に歩みを進めていると、後ろから石川たちが追いかけてきた。
「俺も行くっていっただろ?」
「……ああ、そうだったか?」
 歩調を緩め、石川たちと並ぶ。
「飯が食えるようになっただけでもよかったよな」
「そのうち、復帰できそうですね」
「……それはどうかな……」
「……西脇……?」
 西脇は二人の言葉に俯き、そのまま無言で足を進めた。
「西脇って」
「……復帰は堺さんの決定次第だ。俺達にどうこうは言えない」
「そりゃそうだろうけど」
 石川の言葉に小さく苦笑を漏らし、西脇は橋爪の病室の前に立ち軽くドアを叩いた。
「Dr、入るよ」
 返事はないだろうとは思っていたが、現実にそうだと拒絶された気分にもなる。西脇はドアを引き開けた。
 案の定、橋爪はベッドの上で俯いたまま座っていた。
「Dr」
 橋爪はびくりと体を震わせ、ゆっくりと自らの体を抱きしめた。まるで、それが自らを守る鎧だとでもいうように。
「……き、さん……」

「三浦さんは? もう、帰ったの?」
 ようやく体の強張りをといて、橋爪は西脇を見上げてきた。
「あ……その……食堂に……」
「そうか。三浦医師には悪いことしたな」
「いえ……多分、大丈夫……石川さん……?」
 西脇の後ろで、ドアから見ている石川に気付いた。
「Dr、入っても?」
「……え、ええ……」
 ほんの少し怯えたように、だけど微かに笑みを浮かべて橋爪は頷いた。
「よかった……ありがとう。おはよう、Dr」
「……おはようございます」
 ベッドの脇に歩み寄る石川に、橋爪はじっと視線を凝らす。
「だいぶ顔色も戻ってきてる。安心した」
「そ……ですか?」
「ああ。西脇が帰ってきたからかな?」
 笑みを浮かべて橋爪を見る石川に何故か少しいらついて。ぎゅっと拳を握ることで西脇はその感情を必死で押さえつけた。
 何も分からないくせに。
 それはそうだろう。だけど、自分と橋爪の間のことに、そんなふうに踏み込んでほしくはない。
 橋爪との関係は自分だけのもので、他の人間に関わって欲しくはない……
 何度も繰り返した呟きだった。
 分かってる。橋爪にとっても、石川は大事な友人だ。
 その石川相手にさえ、これほどに嫉妬してしまう自分にまた嫌気がさしてくる。
 どうかしているのは自分自身だ。全てが思い通りにならないからと拗ねて八つ当たりしている、ただの子供のようだ……
「……石川さん」
 橋爪がゆっくりと石川に手を伸ばした。躊躇うかのようにびくりと何度か指を引っ込めつつ、それでもゆっくりと石川の手に触れた。三浦医師すら出来なかった行為を、石
川相手にならできる。
 それを見ているだけで、腸が煮えくり返るような気がする。
 ただ、それを表に出さないのは、橋爪本人がそこにいるからで。
「Dr……」
 石川も驚いたように橋爪を見下ろす。
 橋爪は両手で石川の手を取ると、そっと胸元へと引き寄せた。願いを捧げるかのように、両手で傅き、ゆっくりと頭を下げる。
 今までにも何度も繰り返された光景だったのだけれども。
「……こんなに傷つけて……」
 橋爪の言葉にはっと石川を見た。よく見れば、石川の手は擦り傷だらけだった。
 岩瀬を見れば、岩瀬はただ無言で西脇に頷いた。
「俺なら大丈夫。これでも随分とよくはなったんだ。ほら、擦り傷だけだろう?」
 西脇はまっすぐに岩瀬に向いた。ひょっとしたら、帰国して初めてまっすぐに岩瀬と向き合ったかもしれない。
 ゆっくりと視線で促すと、西脇は先に病室を出た。すぐに岩瀬も西脇の後を追って出てくる。
「西脇さん、いいんですか?」
「いいも何も、石川もDrと話したいこともあるだろう?}
 壁にもたれ、小さく溜息をついた。本当はそうじゃないんだと叫びたくなる気持ちを必死で押し込めて。
 もう誰とも、何とも触れ合わせないで、どこかへ閉じ込めたい。友人も家族も全て排除して、自分だけの存在にしたい。
 ただ、そうしたら、橋爪が橋爪ではなくなるから……
「……岩瀬」
「はい」
「石川の怪我は、この前の?」
「……はい。すみません……」
 岩瀬はこれ以上はないほどに深く頭を下げた。
「……そうか」
 手当てをするほどでもない軽傷者は……石川のような擦り傷やちょっとした切り傷などはわざわざメディカルルームへは行かないだろうから。把握している分以上の怪我人
がいるのだろう。
「……悪かったな」
 岩瀬がいても防ぎきることのできなかった怪我。ひょっとしたら、石川以上に岩瀬もまた、傷を負っているのかもしれない。
 自分がいたからといって、それをカバーしきれていたかはわからない。しかし、陣頭指揮を執るために隊長自ら最前線に出ることもなかっただろう、自分がいれば。
「西脇さんのせいじゃないでしょう?」
「当たり前だ。悪いのはテロリストだ」
 唇の端が歪むのがわかる。
 理性ではそう割り切っていても、それでも罪悪感が消えないのは仕方ないだろう。
「……先に、勤務に入る」
「ですけど」
「Drに、昼飯は持ってくるからちゃんと寝てろって伝えておいてくれ」
「……分かりました」
 岩瀬が頷くと、そのまま監視室に上がった。
 いつものように、厳しく油断できない現実が目の前にある。
 西脇はモニターを睨み続けた。







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