[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
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026
「お疲れ」
 西脇は篠井からのメールに促されるまま、約束の通り食堂へと入った。西脇を岸谷が迎え出る。
「篠井さんは?」
「つい先ほどな。全く、人の部屋を応接室代わりにして」
「悪いな、お邪魔するよ」
 西脇は悪びれず苦笑した。
「ついでに、コーヒー入れてくれ。少し濃い目で頼むよ」
「はいはい」
 そして、西脇は岸谷の部屋へと足を踏み入れた。池上も今は勤務中で、主不在の部屋にも慣れたものだった。
 そして、そこにはタイを外し喉元を緩めた篠井が悠然とソファに座って西脇を待っていた。
「すみません。お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、今しがた来たばかりですから。Drのところに?」
「ああ」
 西脇が篠井の向かいに腰を下ろすと、岸谷が部屋に入ってきた。
「篠井さん、お帰り。久しぶりの日本は蒸し暑いだろう?」
 岸谷が笑いながらカップをテーブルにおいていく。
「確かに。でも、この暑さも肌には馴染むようです。おかしな話ですよね、海外暮らしの方が長いというのに」
「日本人だってことだろう?」
 岸谷が笑った。
「じゃ、食事は和食でいいか?」
「ええ。あとでいただきますので、適当によろしく」
「じゃあ、篠井さんの帰国祝いだ。刺身、残しておこう。西脇もそれでいいな?」
 伺いではなく断定。しかし、西脇は緩く頭を振った。
「俺はDrと一緒でいいから」
「おまえ―――」
「同じメニューでいい。多分、食えない」
「……そうか」
 冷静に言う西脇を岸谷は見つめ、小さな溜息をついた。
「池上も仕事だし。とりあえず、部屋は好きに使っていいから、ゆっくりしていくといい」
「ああ」
「ありがとうございます」
 岸谷の広い背中を見送って、西脇は小さな溜息をついた。
「西脇さん。研修は終了ということで、向こうの教官の了解を得ました。安心なさっていいですよ」
「すまない。世話をかけた」
 こればかりは西脇とて素直に頭を下げるしかない。
「とんでもない。西脇さんのメインは外警の警備システムの視察でしたし、そちらの方は終わっていましたからね。何の問題もありません」
 篠井はゆっくりと笑んだ。
「報告書と旅費の精算は?」
「ああ、明日には提出できる。今日はほとんど内勤していたようなものだし」
 西脇は苦笑した。
「篠井さんは明日休みだったよな?」
「報告書作りで終わりそうですが」
 篠井は軽く笑うと、すっと表情を改めた。
「それで、西脇さん。怪我をした隊員達の様子は?」
「外警の連中なら大丈夫。一番ひどい哀川でもあと2、3日の入院ですみそうだ。他の二人は状況次第で、そのうち復帰させる」
「そうですか―――よかった、思ったほど酷い怪我ではなかったようで。聴いていた爆発の規模からすると、それで終わったのが信じられないくらいですよ」
 篠井の笑みがゆっくりと西脇のささくれ立った心を撫でるように沈めていく。いつから自分は目の前の男をこうまで信頼してしまうようになったのだろう……
「Drの方は……さっきも言ったが、セーフだった」
 篠井がじっと西脇を見つめる。
「実際、性的な乱暴はされたようだが、犯されてはいない。最後まではされずにすんだ」
「……そうでしたか」
 あからさまにほっとした吐息を篠井が吐いた。
「だからといって、何が変わるわけでもないんだが」
 西脇はゆっくりとソファに凭れた。背もたれがギシリと悲鳴を上げる。
 あたかも悲鳴を上げることの出来ない西脇の心の代わりだとでもいわんばかりだった。
「ただ、ショック状態からはまだ抜けていない。そこは、少しずつでも現実に慣れてもらうつもりだ」
「……どれだけ辛い思いをしたんでしょうね、彼は」
 篠井の目が伏せられた。多分、先ほど帰国の報告に行った石川からも何らかの話は得ているのだろう。
「Drに逢うのはもう少し落ち着いてからにした方が良さそうですね」
「……いや」
 西脇の言葉に篠井が顔を上げた。
「むしろ、無事な姿をDrに見せてやってくれないかな。Drは、篠井さん、あんたやマーティのことも気にしていたから」
「……いいんですか?」
「篠井さんだから」
 知らず、橋爪も信頼を置いている篠井だから。
「では、後ほど病室に伺いましょうか」
「今日は寮の部屋へ戻ることになった。しばらくは病棟と寮とを行ったり来たりすることになるだろう」
「退院というわけでは?」
「まだ許可が下りない。でも、その方が俺も安心する」
「そう、かもしれませんね」
 篠井はふわりと表情を緩めた。
「では、後ほどお部屋の方に伺いましょうか」
 篠井の方も、橋爪の顔をちゃんと見るまでは安心できないのだろう。
 いつしか、そこまで篠井はここの隊員になってしまっていたんだ。

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