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056


「西脇から長期休暇を勧めるか」
 エレベータは降り、下のフロアに到着するまで宮沢は無言のままで。宮沢がそう切り出したのは入り口のドアに向かって歩き出してからだった。
「え?」
「親しいのなら、石川からは勧めにくいだろう」
 こともなげに宮沢はそう西脇に告げた。
 主語はなくとも、それが橋爪のことを指していることくらいは分かる。
「あの状態では、すぐに職場復帰ということも無理だろう。1ヶ月か、あるいはそれ以上か。橋爪医師が納得するまで休暇を取る方がいいだろう。中途半端に復帰されても迷惑なだけだ」
 西脇も感じていた「無理」という現実をはっきりと言葉にされ、その現実を淡々と押し付けてくる。
 宮沢が勧めろということは、既に彼の中では既に橋爪に対して長期休暇を取らせるということで決着がついたのだろう。きっと今日のいきなりの査察という名目の見舞いも、それを決定付ける為のものだったか。
「……そこは堺医師や石川と相談をしますが、恐らくそうなるかもしれません。確か、有休もかなり溜まっていたはずです」
「話が早くて助かる。頼んだ」
 そして、宮沢は扉をくぐっていった。この暑い最中にスーツに包まれ汗一つかいていない涼しげな背中を西脇はただゆっくりと頭を下げて見送った。
 橋爪に現実を見せるのは、その現実を押し付けるのは自分の役目なのか―――
 それを拒絶と取るか、休暇を与えられたと取るかは橋爪次第だが、今の橋爪は前者かもしれない。
 病状を理由に仕事すら取り上げられたと、そう思っても仕方がない。
 しかし、そう思っているのは自分のほうなのかもしれない。自分こそが橋爪から仕事を奪い、プライベートを奪い、いや全てを奪っている存在そのものなのかもしれない。
 そう思ってなお、宮沢の言葉にどこか賛同する自分もいる。それでも、あえて自分が汚れ役を引き受けなければ、きっと他の誰もがそれを口にすることは出来ないだろうから。


「西脇さん、お疲れ様です」
「……ああ」
 外警監視室に戻るなり、西脇はどっかりと椅子に腰を沈めた。横目で伺い見たモニターには、宮沢が運転する車が今にもゲートを通過しようとしている。それをどこか剣呑な視線で睨んでいたのだろう、羽田が苦笑しながらミネラルウォーターのペットボトルを西脇の前へと置いた。
「まあ、水でも飲んで」
「……サンキュ」
 西脇はキャップを回し開け、一口口に含んだ。知らず乾ききった体が水分を求めているのか、そのままボトルを煽ると一気に中ほどまで飲み干した。
 そのままテーブルの上におくと、小さなため息を零してしまった。
 いくら空調の効いている室内にいるとはいえ橋爪は食事はおろかろくに水分を取ることすらできないでいる。それなのに、と何故か自己嫌悪すら感じてしまって。
 テーブルにボトルを置いたままそれを凝視する西脇を羽田がゆっくりと見遣る。
「……お疲れなんですよ、きっと」
「……今、疲れたなんていっている場合じゃないだろ」
 西脇は先ほどやりかけていた書類を引っ張り出した。テロに関する最終報告書である。現場監督を行った羽田に大方を任せてはいても、最終確認は西脇がするものだから。
 羽田もその書類を一緒に覗き込む。
「西脇さん、先ほどの会議はやはり?」
「ん? ああ、この前のテロの残務処理と委員会からの事後報告だった。緊急の増員は今のところないから、現在の体制であいつらの復帰までまわすことになった」
「まあ、あの連中の様子なら復帰まであと数日というところでしょう? リハビリが終わるまで、配置に気をつけて行きますよ、俺も」
「ああ、頼むよ」
 そして、書類を捲った。提出前の書類なだけに、修正する場所もほとんどない。再度通しで確認し、必要な場所には付箋を貼ってその指示を書き込んだ。
「修正したら、今回は羽田の名前で提出しろ」
「分かりました。お手数をおかけしました」
「……いや」
 西脇は頷くと、ゆらりと立ち上がった。
「……休憩に行って来る。何かあったら呼べ」
「了解です。少し長めで構いませんよ、ゆっくりしてきてください」
「……ああ、悪いな」
 そして中の隊員たちに僅かな指示を与えると、西脇は監視室を出た。そのまま、インカムを操作して石川へとラインを繋ぐ。
『―――石川だ』
「西脇です、お疲れ様です」



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