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054

「ところで、堺医師。先日、橋爪医師から、来月頭の出張申請が出ていたが」
「ああ、横浜の、だったかね」
 堺が歩きながら宮沢に応じた。
「循環器科の学会だったな、確か」
「今の様子で行けるのか?」
「さて、どんなもんだろうかね。行けない、と断定はせんよ」
 後ろにいる西脇からは堺の表情を読み取ることは出来ない。
「当日の体調次第だな」
「現状では、許可は出せません。そもそも、学会の参加など必要があるのか、疑問ですしね。診療に直接関係するわけでもあるまいし」
「今のまま、ここで飼い殺しにしておくのならな」
 呆れたように堺がため息をつく。
「宮沢、専属医師なら、健康診断と、少しの処置だけで満足か? 医学もな、日々進化しているんだ」
「それは分かっているつもりですがね。学会など出ずともそれは……」
「医師として成長させる。それが上に出来る唯一のことだろうが。ギリギリまで保留にしておくんだな」
「……分かりました」
 淡々と宮沢は堺に応じ、真っ直ぐに前を見据えた。その視線の先に何を見ているのかなど、西脇には思い図るつもりもなかったが。
「……まずは外警の隊員の方から行きましょうか」
「そうだな……それにしても」
 堺が頷き、口元を緩めて宮沢を見上げる。
「何ですか?」
「宮沢が隊員たちを見舞うようになるとはな」
「―――見舞いではありません。あくまで」
「ああ、分かっている。あくまで、査察の一環なんだろう?」
 憮然としてしまった宮沢をからかうかのように堺は軽く笑うと、病室のドアを叩いた。
「哀川、入るぞ」
「……は、はいっ」
 寝ぼけたような返事がし、中でバタバタと身動ぎする物音がした。
 堺がドアを引き開け、堺と宮沢、次いで西脇が病室に入る。
 哀川は宮沢の姿を認め慌てて姿勢を正そうとし、傷に障ったのか盛大に眉を顰めてしまった。
「哀川」
「は、はい」
「寝ていたのなら起きなくて構わない。横になりなさい」
「……すみません……」
 そういわれて逆らえるような隊員たちはいないだろう。大人しく哀川はそのまま体を横たえた。
「哀川は足の負傷だったな」
「……はい」
 びくびくと宮沢と、そして西脇とを見遣って頷いた。
「ただの査察だ」
 呆れたように宮沢が言う。
「まだ痛むようだが、あとどれくらい入院が必要なのか?」
「あ、それは……」
 困惑して、哀川は縋るように堺を見た。
「最低あと数日は必要だ。今はやっと歩ける程度だしな」
 笑いながら堺がそう応える。
「退院させてもしばらくはリハビリで休暇か、勤務の縮小も必要だろうな。そこは西脇と相談しながら進めるから問題はなかろう」
「……そうか」
 宮沢は頷くと、哀川を睥睨した。
「なんにせよ、きちんとリハビリをして復帰しろ」
「はい―――」
「ただし、無理はしないよう」
 その言葉に面食らったように哀川は宮沢を見た。
 西脇も同じだった。まさか宮沢がそのような隊員を労わるかのような言葉を告げるとは思わなかった。
 哀川が思わず西脇を見上げる。西脇が僅かに頷くと、哀川はほっとした顔を見せた。
「ありがとうございます」
「いや、きちんと完治してからの復帰でなければ、迷惑をするのは他の隊員だろうからな」
 そんな冷たい物言いの中にもどこか不思議なものを感じて、西脇も哀川と一緒に頭を下げた。
 勝村と山田の部屋でも似たようなやり取りを交わし、そして病室を出た。
「あとは、橋爪医師だな」
「ああ」
 橋爪に対しては、多くは報告していないはず。だからこそ、宮沢も査察という名目でこちらを探るかのように訪れたのだろうが。西脇としては本当に完治する暇で誰にもあわせたくはないというのが本音だった。
「橋爪君、失礼するよ」
 返事がないのはいつものこと。軽くノックするだけノックして、堺は病室のドアを開いた。

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