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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
ぽつりぽつりといろんなことを話した。
西脇はロスでのこと、篠井やマーティとの事を。 橋爪は、西脇が不在にしていた間の隊のこと。石川のこと。そして姉のこと。 互いの温もりを傍らに感じながら、ただ囁くように途切れがちの会話を繋いだ。 西脇も橋爪も、どこか手探りをしながら。 ただ、二人とも決してテロのことだけは口に出来なかった。 何がきっかけで再び橋爪が心を闇に沈めていくか、西脇にも分からないから。 だから、三浦が勤務を終えて顔を出した時に、幾分ほっとした感じがしたのは否めなかった。 「もう引き継ぎも終わらせてきたし、しばらくなら大丈夫だよ」 そんな三浦の言葉に促され、西脇は病室を出た。 昨夜の食器を返すついでに食堂に寄ると、早番の隊員達の食事を切り盛りしていた浅野の笑顔が西脇を迎え出た。 「お帰りなさい、西脇さん」 「ただいま。悪いな、残した」 「あ、でも、少しは減ってるじゃないですか。Dr、召し上がれたんですね」 ほっとしたように器の中を見る浅野に西脇は苦笑した。 「少し、無理矢理だけどな」 「西脇さん……Drを脅したんですか?」 「人聞きの悪い。頼んだんだ」 「それでも、西脇さんのいうことだから、Drも聞くんだろうなぁ」 浅野は笑う。 「で? 何にします?」 「朝飯は後でいいが、Dr用に軽い朝食を頼めるか? できれば、あんまり胃に負担がかからないものがいいんだが」 「……じゃあ、重湯かお粥あたりで。もうすぐ出てくると思うんで、チーフと相談してみます」 「悪いな、浅野」 「Drが食事してくれるのなら、喜んで用意しますって」 きっと、浅野も気にかけてくれていた人間の一人なのだろう。 クロウが恋人にしているという理由も何となくわかるような気がしてくるから不思議だ。 普段は軽くて頼りなさそうには見えても、どこか芯がしっかりしている男だから。 「浅野、ありがとう」 「何いってるんですか」 少しだけ照れたように、だがぶっきらぼうに苦笑して。 「30分くらいで戻ってくる。俺の分も適当に頼むよ。別に冷めてても構わないから」 「分かりました」 ただ平然とした顔をして。 何事もなかったかのようにだけ、他の隊員の前では振舞って。 そのまま寮へと入り、まっすぐに自室へと戻った。 ソファにどっかりと腰を下ろしてしまうと、とたんに体に震えが走ってくる。 「……紫乃……」 恋人のいない部屋がこんなに冷たいものだったなんて、一人暮らしに慣れた西脇でも思ってしまうほどに。 そして、恋人と一緒の生活に馴染んだ自分がいるのも確かだった。 ここにはいない恋人の名を呼んで…… それでも、自分が立ち上がらなければ、余計に橋爪が立ち上がることはできないんだと自らに言い聞かせた。 着替えを用意してバスルームに向かい。 熱い湯を頭から被りながらゆっくりと下腹部に手を伸ばした。 浅ましい熱を抱えたまま橋爪の元に戻るつもりはない。 そして、その熱を抱えたまま警備に入ることなど、西脇には出来ようはずもなく。 腹から茂みを辿り、むき出しになった己に触れる。 先ほど無理矢理押し殺した自分の情動がそこにある……そのはずだった。 指で擦り上げ掌で愛撫しても、そこは立ち上がるどころか、余計に萎縮して湯に濡れそぼった姿をさらけ出している。 裏筋を辿り、爪の先で引っかくように刺激を与えても反応のひとつも見せることはなかった。 常の西脇にはあり得ないことだった。 橋爪のいつもの姿を思い出すだけで、触れる前からそこは堅く芯を持ち、高ぶるはずだった。 西脇は舌打ちをすると、水へとシャワーを切り替えた。 滝のような冷たい水が、西脇の体を容赦なく叩いていく。 冷たいというよりむしろ痛みを伴う感触で。 痛みの後には熱だけが残り、ぞろりと体を這っていく。 冷たいシャワーを浴びながら、冷静になれと自分を戒める。心のどこかでくすぶり続ける怒りや哀しみをこのまま沈めてくれればいいと思いながら。 それでも時間は容赦なく過ぎ去っていく。 体の芯まで冷たく凍えていても、新たに始まる日常の中へと身を投じなければいけないのだから。 神経質なくらいに糊の効いたワイシャツに手を通し、ネクタイを締めた。銃と警棒を腰に下げ、何とか外警班長としての顔を再構築して。 静寂の支配する、よそよそしい空気を漂わせた自分の部屋を後にした。 PR
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