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049
「羽田、遅くなって悪かったな」
「西脇さん……まだ30分もありますよ?」
 監視室に行くと、羽田が苦笑で西脇を迎える。
「用が早く済んだだけだ。それに、仕事溜まってるだろ。少しくらいはな……」
 監視室に備え付けのデスクワーク時くらいにしか使わない椅子を引き出して、どっかりと腰を下ろした。
「とりあえず、今のところは何も問題ありません」
「そうか」
 そのまま西脇の目はモニターを見据える。全てのモニターをチェックして、羽田の言う通り何も問題がないのを見てとると羽田へと視線を戻した。
「羽田、この前頼んでいた報告書は」
「はい。すぐに転送します」
 羽田はパソコンのモニターへと向かい直した。西脇も自らのパソコンを立ち上げるとモニターを浮かび上がらせた。
 メールで届いたファイルを開く。
「まだ途中か」
「今日中には完成できます。それが終わったら今日は上がる予定です」
「ああ、分かった。それと、この前のテロの……」
「既に隊長提出しました」
 西脇とは異なった視点での分析はいつもなら興味深くも見分するものなのだが。
「……実行犯の処理は?」
「いつもの通り、逮捕勾留、すでに警察へ引き渡して拘置所へ護送されました」
 じっとモニターを見据える西脇の横に羽田が立った。
「……西脇さん。特定はさせませんよ」
 橋爪を襲った実行犯を特定しようと自分が思っているとでも?
 でも、それが全くの間違いであると言い切れるのか。もし、実行犯を特定し、その男が目の前に立ったとしたら……それでも復讐しないでいれるというのか。
 20名近く逮捕された実行犯のうち、ごく初期に逮捕された数名を除いて全てが疑わしく思える。
 実際、そのうちの誰かが橋爪を辱めた。
 全員に報復を望むか。それが無理なことくらいは西脇にも分かっている。それでも、橋爪が感じた以上の絶望を味あわせたい。
「被害者の家族同然の存在なら尚更でしょう」
 ふっと小さなため息をついた。そして、再びパソコンの前に戻ると、西脇へとファイルを送ってきた。
「羽田―――」
「実行犯と収容拘置所のリストです。取調べして、あとは全て警察の手に委ねるべきでしょう。いつものように」
 羽田は淡々と言った。
「事後処理はもう終わったんです。割り切って、次の対策を練りましょう」
 羽田だとて橋爪のことをまったく案じていないわけではないのを知っているから。
 それでも、羽田がそう決めた以上、西脇に問い詰められたところで口を割ることはないだろう。
「……警備の薄かった場所や、フォーメーションの見直しも必要だな。おまえの見解を……」
 そのときインカムが呼び出しの鋭い音を立てた。
「西脇だ」
『Eゲート加藤です。お休みのところすみません』
「いや、もう出てきている。どうした」
『橋爪紫茉さんがいらっしゃっています』
「―――医務室にすぐに通してくれ。俺もすぐ向かう」
『了解しました。お伝えします』
 そして、インカムを切った。
「―――医務室に行って来る」
「はい、どうぞ」
 応じた羽田は無表情だった。
 その表情の奥に隠されたものが何なのか、西脇には推測する余地もなかった。


「西脇さんっ!」
 紫茉は、きっと夜勤が明けてその足で来たに違いない。やや疲れた表情の中に、必死な色を瞳に浮かべていた。
「紫茉さん、早いよ。どれだけ急いできたの」
 軽く弾んだ息を整えている紫茉に西脇は冷たい視線を向けた。
「……紫乃は?」
「病室だ。案内はするが……先に堺医師に会うか?」
「……そうね。そうさせて」
 ふうっと息を吐き出して頷いた紫茉に、西脇はさっさと背を向けた。
「あ、ちょっと待ってよ」
 慌てて紫茉が追ってくる。
「ねえ、紫乃は」
「通路で話すことじゃないだろ? 昨日電話したじゃないか」
「そうだけど」
 すたすたと歩みを進めながら、西脇は医務室にインカムを繋いだ。
『はい、メディカルルームです』
「西脇だが―――堺医師は」
『はい、換わります。堺先生、西脇さんです』
『おお、西脇か』
「―――今から、紫茉さんをつれて医務室に行くから。今からフロアに上がる」
 それだけを口早に告げると、西脇はさっさとインカムを切った。
「……待ってよ! 西脇さん……っ!」
 ぐいっと腕が引かれた。
「待ってってば!」
「……別に、逃げてるわけじゃないんだが」
「ひどいわね」
「どうとでも」
 橋爪以外の誰に言われても傷つくことなどない。目の前の橋爪の姉に対しても、敬意を払いこそすれ自分の内面にまで踏み込ませることなどしたくない。
 西脇は足を止め、紫茉を見下ろした。
「違うわよ。そんなひどい顔で仕事しているって言うんじゃないでしょうね」
「は? ひどいな、紫茉さん。これでも、それなりに伊達男のつもりではいるんだけどね」
 紫茉の言っていることは分かる。紫茉の目は鋭く西脇を見据えているから。
 怒っているのではない、ただ心配しているだけなんだと。
 その気遣いでさえ、今の西脇には煩わしいものでしかない。
「茶化さないで」
「……忙しいだけだ」
「だったら、ここまででいいわよ」
「部外者を一人中に放置するわけにもいかないだろ」
「なに、イラついてるのよ……」
「別に」
 そう言い捨て、西脇はさっさと医務室を目指しそのドアを開けた。


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