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「……紫乃、もういいから」
橋爪の投げかけてくる真摯な視線が、逸らした横顔に突き刺さるような感じがしていた。しかし、自分こそ橋爪を正視できない。 「けど……っ」 橋爪が背中から圧し掛かってきた。西脇をベッドに押さえつけるようにして、必死で首を伸ばしつつがむしゃらに唇を合わせてきた。 「……止めっ! 紫乃っ!」 唇の離れる僅かな合間に、西脇は必死で身を捩った。それでも、平素の橋爪からは想像もできないほどに、そのか細い腕の拘束を振り解くことができない。 「私のせいでも、そうじゃなくても構わない」 泣きながらも、まっすぐに西脇に向かって。逃げる西脇の顔を掴み、何度も何度も息を荒げながら唇を重ねてくる。 人の気も知らないで。というのは大げさなのか。 でも、今の橋爪を抱くことはできない。抱きたくはない。 橋爪の手が伸びて、西脇の股間をがしりと握った。いつもの遠慮しながらも愛しむような手つきではなく、ただ義務的に握っただけで。 「紫乃、やめろ……っ」 「やめませんっ」 嗚咽なのか、興奮しているのか判断できない。ただ、乱れた息の中で橋爪が言い切った。 「気のせいです。大丈夫ですから」 橋爪の細い手がパジャマと下着をかいくぐって直接触れてきた。いつもなら、触れられる前から瞬時に反応して立ち上がるはず。それなのに、自らのものは興奮するどころか、萎え切ったままで。 「……止めてくれ」 「そんなはずない……」 ごしごしときつく扱かれても、触れられている感触がするだけで、股間に熱が集まる気配もない。 むしろ必死になっている分だけ、橋爪が、可哀想で、痛ましいだけで。 「……分かっただろ? だから、もう、止め。な?」 「違……っ」 パジャマからそれをつかみ出すと、橋爪は迷わずそれに唇を寄せてきた。 「紫乃っ!」 そんな風に、今の橋爪には、あからさまに男の性を示したくはない。 髪を引き掴んで橋爪を剥がそうとした。しかし、橋爪はその手を叩き払った。 「私が欲しいんですっ! 西脇さんは黙ってて」 「だから……っ」 先端をつるりと舐めて橋爪は伸び上がると、まっすぐに西脇を見下ろしてきた。 欲情の欠片も見当たらない真剣な眼差しで。それでも、西脇のことを必死で思っていてくれることはわかる。 「……お願い。といっても?」 「紫乃……」 「私は西脇さんが欲しい。私の体はまだ傷だらけで、抱いてはもらえないかもしれない。だけど、唇は……唇だけはきれいなままだから。唇だけはあの時のままだから……」 西脇は手を伸ばすとそっと橋爪の唇に触れた。 カサカサに乾いた唇でも、それだけは男の蹂躙を許していないという橋爪のただひとつのプライドなのなら…… 「せめて、唇でだけでも、あなたを愛したい」 必死な橋爪の表情に、抵抗する気持ちも僅かに収束し。 「分かったよ」 西脇はそっと唇を重ねた。 だから、橋爪は混乱の中にいてもキスだけは拒まなかったのかと、不思議に納得もして。 「……紫乃がしたいようにすればいい」 「ん」 西脇はベッドの上に腕を投げ出し、全身の力を抜いた。 PR この記事にコメントする
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