[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
最新記事
083
(03/01)
082
(10/08)
081
(01/19)
ご意見・ご感想
お返事
Powered by NINJA TOOLS
※名前なしでも送れますw
忍者ブログ | [PR]
テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



051
「……や……っ」
「紫乃」
「……や……放して……」
 紫茉の腕に囲われたまま、橋爪は体を震わせた。力なく拒絶はしても暴れるわけではない。ただ紫茉の腕の中で震えているだけだ。
「……お願い……だ、よ……」
「紫乃……?」
「……触っちゃいけない……お願い……」
 そっと紫茉の腕が橋爪を解放すると、橋爪は自らの腕で自らを抱きしめた。
 先日までの橋爪と同じように。自分で自分を守るかのようにきつく唇を噛み締めて、蒼白な顔をして。
「……ごめん、紫茉……ごめん……」
 呟きつつ漏れるのは、橋爪なりの謝罪の言葉。
「心配かけてごめん……ごめんね、紫茉……」
「紫乃、何で謝るのよ。紫乃が謝ることなんて何もないんでしょ? ねえ、紫乃」
 それでも橋爪は首を振った。自らを抱きしめる腕をそっと解放させ、紫茉はその手をゆっくりと取った。
「……紫乃、ちゃんと私を見て? 私の顔を見て? 私、怒ってないよ」
 紫茉は躊躇いもなく床に跪くと、俯く橋爪の顔を下から覗き込んでゆっくりといった。
「しーの。ほら、私を見てよ」
 橋爪は怯えたままの瞳で、それでも紫茉をじっと見つめた。ゆっくりと呼吸を繰り返し、そして真っ直ぐに。
 ようやく、ほっとしたような穏やかな光が橋爪の瞳の中に戻ってくる。
「うん、それでいいわ……」
 紫茉は満面の笑みを浮かべる。
「紫乃がやっと私を見てくれた」
 そのまま両方の掌で橋爪の拳をそっと包んだ。橋爪はびくりと体を一瞬震わせたが、それでも相手が紫茉だと分かっているのか、ただゆっくりと紫茉を見返す。
「紫乃が生きていて、こうして笑っているだけでいいんだよ? 昨日、電話をくれるまで、私、本当に生きた心地がしなかった。本当によかった」
「紫茉……姉さん……」
「うん」
 橋爪の呼びかけに紫茉がゆっくりと頷いて立ち上がった。
「こうして生きていてくれたことを感謝しないと、ね」
 怯えてはいても、少なくとも橋爪は紫茉の手を拒絶していない。
 今更紫茉に対する嫉妬もないだろうに、それでも感情がざわざわと波立つのが止められない。
「―――西脇」
 いつの間にか堺が横に立っていた。
「二人きりにしてやろう。出るぞ」
 西脇が顔を上げ返事をする前に、堺は強引に西脇の腕を掴み病室の外へと引きずり出した。
「堺さんっ」
 西脇がきつく睨みつけるのも予想の範疇だったのだろう。ただ穏やかに笑み、口元をそっと綻ばせた。嘲笑ではない、穏やかな笑みだった。
 堺はどうしてそんな風に笑みを浮かべることが出来るのだろう。
 橋爪がそこにいて、そこでおびえていると言うのに、何も出来ない自分に対しての苛立ちや焦燥感を感じはしないのか。
「折角だから、二人で話をさせてやれ。お前がいたら、できる話も出来ないだろ」
「別に、Drが俺に隠していることなんてないだろ」
 言外に堺の言葉を否定し、ここに残る意思を発したはずだった。
「それでもだ」
 堺は西脇の言葉をぴしゃりと遮った。
「分かっていると思うが、紫茉君がいつ帰るかは知らんぞ?」
「……だから?」
「彼女が戻るときには連絡するから、とりあえず仕事に戻れ。ほら」
「しかし」
「必要なら、ゲートまで看護師に送らせる。戻るぞ」
 そういわれてすごすごと戻るのもどこか癪で、それでも壁にもたれたまま「待とう」という姿勢を崩さないでいると、堺は西脇の腕をつかんでエレベーターの方に押しやった。
「いいから、二人きりにしてやれ」
「堺さん」
 いつもならハイハイと仕方なく頷きもするが。
「西脇」
 開いたエレベーターの中に西脇を押し込むと自らも乗り込み、有無を言わさず降下のボタンを押した。しゅっと軽い音を立ててドアが閉まり、そのままゆっくりとエレベーターは降下しだした。
「……西脇、その様子なら時間はあるんだろう? 医務室に寄って行けばいい」
 反駁するのもバカらしくなり、西脇は大人しく堺の後ろについていった。
 第一、堺がこうした物言いをするのはこうと決めたとき。そして堺がそう決めたのなら、どんな手を使ってでもその意志を押し通すことだろう。
 それが同僚である橋爪のためなら尚更だ。

 

拍手

PR


この記事にコメントする
HN:
TITLE:
COLOR:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS:
<<050 | HOME | 052>>

Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright [ Sillygames ] All Rights Reserved.
http://westbridge.blog.shinobi.jp/