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テンプレ・レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分(笑)
※注意 2008年夏~秋のWEB拍手より加筆訂正しました。 永詩番外編の扱いになります。 西脇さんが帰国メールを紫乃さんに送った後の日本の、 紫乃さんと池上というほのぼのコンビですね。 夕 焼 け JDGでは、いきなり夏本番を迎えた。 数日前までは肌寒さも感じるくらいだったのに、それこそいきなり真夏日になる。 見上げれば、雲ひとつない、赤く染まった空が視界一面に広がっている。 夕方になってやや穏やかな空気が戻っては来ても、空調の行き届いた館内から一歩外に出ればやっぱり蒸し暑い。 それでも、そんな中、ずっと外で働いている隊員達もいるのだから。 今はここにはいない恋人然り。 恋人の不在を必至で守る隊員達然り。 数日前の爆弾事件の事後処理も終わり、ようやく平穏さが戻ってきたみたいで。「暑いー」とぼやきながらも、その顔には笑みが戻りつつある。 だからこそ、ちゃんと休める時には休んでほしくて。 だからこそ、ほっと気を緩めて体調を崩さないようにと、祈るしか出来なくて。 やっぱり橋爪は白衣をまとって外に出る。 館内より、館外の隊員達に余計に負担はかかるものだから。 「お疲れ。まめに休憩は取ってるか?」 明らかに不調を顕してでもいない限り、そんなチェックしか出来ないけれど。 「小まめに休憩とって、ちゃんと水分補給しないと、熱中症になるからね」 「はいっ!」 どの青年も元気にそう笑顔で返してくれる。それが嬉しい。 どの一人が欠けても、恋人は気にするだろうから。 恋人である自分以上に、自分の部下を家族のように大切にしている恋人だから。 「そろそろ帰ってこられるんですよね?」 池上が微笑んで橋爪を見上げる。 「うん、そうだね」 さすがに汗ばんで、ほんの少しだけど疲労の色が隠せないでいる。 「……そういえば、池上。昨日の夜勤途中からずっと勤務してないか?」 確か、緊急出動があって出たはずだった。そう朝から岸谷に聞いた覚えがある。 「大丈夫ですよ、Dr」 「池上」 「僕はもう直ぐ上がりですから、ちょっと長めの残業だったと思えば。いきなり、延長になった分、あちこちしわ寄せが来てますしね。それに、この程度でどうにかなるだなんて、西脇さんにそんな心配をかけたくはありませんしね」 少しだけ誇らしげに、夕日に顔を染めて池上は笑う。 ほんの数日、班長の不在が長引いたから、守るべきものも守れませんでした。 それは、池上達も言いたくはないのだろう。だから、必死で留守を守っている。それが、隊員達のプライドでもあるのだろうし。 「じゃあ、一番、割を食っているのは羽田かな?」 「そうですねー、でも、まだ6連勤めですし。西脇さんが戻ったら、速攻休みをもらうともいってました。大丈夫でしょう?」 「ならいいんだけどね」 橋爪は苦笑して。そして、池上を手招いた。 「じゃあ、極秘情報」 「え? 西脇さんに叱られないかな?」 といいつつ、笑って池上は橋爪に耳を寄せる。 「20日の夕方には戻ってくるって」 「本当ですか? 思ったより早かったですよ」 「うん、そうだよね。でも、西脇さんからのメールだから、間違いないと思うよ」 そう笑って。池上と笑いあって。 「よかったですね、Dr」 「何が?」 「だって、2週間以上、一人寝でしたもんね」 「池上……もうっ」 「あれ? Dr、真っ赤ですよ?」 「夕焼けのせいだっ」 それこそ、夕焼けより顔が赤くなったのが分かる。だけど、それを夕焼けのせいにして。 「それに、その日は夜勤だし……っ」 ぶつぶつと、言い訳にもならないことを呟いて。 「でも、西脇さんが戻ってこられるの、すごく楽しみです」 「……うん、そうだね」 池上の言葉に、深く頷いて。 遠く離れた距離が寂しいわけじゃない。 遠く離れていても、心は寄り添っているから、逢えない時間が心許ないだけだ。 ただ、それを自分の心の中に閉じ込めておくだけではなく。 こうして信頼しあう仲間がいて、共に帰国を待てるというのは、とても幸せなことなのかもしれない。 どこか温かい気持ちで、池上を見遣った。 「じゃ、あとちょっとだ。頑張って」 「はい」 そして、友人モードから仕事モードへと表情を切り替える池上に、笑みを誘われるまま、館内巡回に戻っていった。 PR
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