どんなにきつく抱きしめても、飽きるということはない。
それなのに、明日から2週間はロスに出かけての研修もあり。毎日一緒にいても、もっともっとと欲するのに、離れてはどうなるのか。
「2週間分の栄養補給……してもいい?」
恥ずかしそうに目を伏せながらも、こくりと深く橋爪は頷いてくれる。離れがたい想いは、橋爪も一緒なのだと、そう感じて。
全てを西脇に預けるように委ねてくれる。
深く、心の奥底まで届くように、自分の心ごと橋爪に託したくて。
2週間の海外出張に行くだけだというのに、2週間も会えないという時間が余計に西脇に不安をもたらす。
あるいは他の何かが。
「あ、ああ……西脇さん……」
吐息と共に吐き出される声に、自分自身をも煽られていく。
「紫乃……く…っ」
低く呻くと同時に吐き出した自らの情欲の証でさえ、橋爪の体は貪欲に欲してくる。
整わない呼吸を重ねて、顔を見合わせると小さく笑った。
「紫乃……」
汗で頬に張り付いた髪をかき上げて、さらに呼吸を重ねていく。
「あ、はぁ……んっ」
吐息を封じられる苦しさに、橋爪が身動ぎすることさえ、愛おしくて。
「……このまま、おまえを箱に閉じ込めてでも連れて行きたい」
なんて、物騒な言葉まで飛び出してしまう。
火照る体を抱きしめたまま、熱い吐息と共に橋爪の耳に囁きこんで。
「おまえを放すことがこんなに不安だなんて……」
くすりと橋爪が笑う。
「たった2週間の出張でしょう?」
「たったじゃないよ。2週間も、だ。それに、胸騒ぎもして」
「大丈夫ですよ……」
橋爪は自らの汗で濡れた胸に指を滑らす。そこかしこに花開いた西脇の激情の結果をうっとりとした表情でゆっくりと辿っていく。
「西脇さんがここにいるから……私は西脇さんを待ってられる」
「紫乃……っ」
かき抱いて頬と頬とを摺り寄せて。
「いつもは、文句言うくせに」
「だって、この痕がなくてもあなたは傍にいるでしょ? だから、この痕が消えないうちに戻ってきてください。じゃないと、私が西脇さんを忘れてしまうかもしれませんよ?」
「それは困るな」
再び口付けを落として。
「じゃあ、俺も紫乃を忘れないように、紫乃からも、もらおうかな?」
「……え?」
「キスマーク」
「そんな……面と向かって言われても」
頬を赤らめて、橋爪は小さく俯いた。その顎をすくい、ねだるかのように真っ直ぐ橋爪の瞳を覗き込んだ。
「駄目?」
「駄目じゃありませんけど……じゃあ、仕事にかまけて私を忘れません? 毎日、とはいいませんから、せめて間で一回だけでも電話くれます?」
出かけていったっきり、電話の一本も寄越さないのは良くあることだから。
「電話。それと、メールも。約束する」
「待ってます」
橋爪の方から西脇をまたがるかのように上に乗り、優しいキス。
そのまま唇は肌を伝い、喉仏を優しく愛撫するように啄ばんでいく。それがくすぐったい。
「紫乃、ここに……」
西脇は、橋爪の視線を左胸へと導いた。誘われるように何度も何度も口付けが落ちていく。
激しく鼓動を打つ心臓の上に、直接口付けを落とされ、ただでさえ平静ではいられない鼓動が再び、激しく高鳴っていく。
濡れた音を立てながら何度も何度も吸い付き、舌で辿る。その横の胸の突起と一緒に唇が這い、舌で舐め転がされる。
「こっちも触ってくれる?」
橋爪の左手を自らの右胸に押し当て。橋爪がもたらす緩い快感に身を委ねて。
「紫乃……っ」
堪らずに、西脇は橋爪の尻に手を伸ばした。柔らかな桃肉をもみ上げ、果汁をこぼすそこを丹念に指で辿る。
「あ、西……駄目……っ」
「紫乃、口がお留守だよ?」
「だって……んっ」
再び胸に落ちる口付けに、西脇はゆっくりと奥に指を差し入れた。先ほどまで自らを貪欲に受け入れ赤く色づいていた場所。少し指を動かすだけで、先ほど自分が放ったものが指に絡み、濡れた音を響かせる。
「あ、あ、駄目ですって……」
「駄目って言ってないよ、ここ……」
実際、捻り込んだ指を喜んで締め付けてくるのは橋爪の方。更に誘うように、優しく西脇の指を奥へと誘い込む。
キリリと肩に爪を立てられた。きつくしがみついてくる、その痛みが嬉しい。
「紫乃、自分でしてくれる?」
「やぁ……駄目……」
「駄目じゃない、ほら……」
誘うように、腰を押し付けゆるりと動かして。つるりと飲み込まれそうになると、あえてそこを外して周りを擦りまわす。
「やっ、西脇さん……ね、おねが……」
「じゃ、ちゃんと言って……?」
「指じゃなくて……ねぇ……」
真っ赤になりながら、首を振って。
先ほどまでの行為で火照りきっている体は、容易に火を再燃させるようで。
「ほら……支えてるから、ゆっくり自分で入れてごらん? ……ほら……紫乃がしたいようにしていいから」
腰を支えて、自らの屹立の上へと導いて。
「ああ……っ」
先端の一番太い部分を飲み込まれると、西脇は下から腰を突き上げた。ずるりと橋爪の体が蠢き、西脇のものを最奥まで咥え込み離さない。
「ああ、んっ……や……ごかないで……」
「ホント? 動かないでいい?」
西脇はベッドのスプリングを利用して、緩く腰をうごめかせるだけ。
浅い快感に髪を振り乱して、橋爪はもだえ。堪えきれずに、何度も何度も腰をゆらしては上下させる。
肩にきつく食い込んでくる橋爪の爪も痛みさえも、西脇にとっては快感にすり替わる。
「紫乃……紫乃……」
何度名を呼んでも足りない。何度貫いても、この心のうちに暴れる激情を伝えつくすことなど出来はしない。
橋爪も同じ想いだと信じて。
上になり下になり、西脇は飽きずその体に橋爪の愛情を刻み込んだ。

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