[PR] 脂肪吸引 永遠の詩 忍者ブログ
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002

 何事もない平凡な日々こそが至上のものであるように、感じられることこそがまた幸せにも思える。
 こうして何の事件もなく、ただ平穏に過ごしていけるのなら……それこそ自分達は失業なのだが、それでもいいかと思えてしまう。
 大切な人を戦いの中で守り一緒に生き抜く。
 それもいいだろう。
 だけど、穏やかな風の中で二人、ただ平穏な時を共に重ねていけるのなら、それに越したことはない。
『平和ボケでもしたんじゃありません?』
 きっと、そういいながら穏やかに微笑む恋人をその腕にそっと抱いて。
 ただ時の移ろい行く様を、ゆっくりと一緒に眺めて行けるのなら……


 1週間前の大きなテロ以来、バタバタすることもなく穏やかに過ぎていく日々。
「西脇さん、そろそろ帰国の準備をしてください」
 そう篠井に言われ、西脇は先日キャンセルした航空券の再発行を依頼するために空港へと電話を繋いだ。
「篠井さん、直行便なら3日後の19日が空いているそうですが? エコノミーだけだそうですが、どうします?」
「狭いのが辛いのは、西脇さんだけじゃ?」
 マーティがからかう様に口を挟んでくる。篠井もそれに小さく笑う。
 実際、マーティにしろ篠井にしろさほど大柄とはいえない。エコノミー席で窮屈な思いをするのは西脇だけだ。
 だが、多少の窮屈な時間を過ごすことより、一日でも早く日本へ戻ることのほうが西脇にとっては優先順位の高いことだった。
「西脇さんは別便で、ビジネスクラスを取られても構いませんよ?」
「別に、一緒で構わないが……じゃあ、決定だな。すみません、その便でお願いします……では、よろしく」
 そして西脇は電話を切った。
「着くのは20日の夕方ですね。結局、4日の延長ですか……」
「ああ、もうちょっと早く終わるかと思ったんだが」
 実際、延長した分も明日には目処が着きそうだ。飛行機さえ取れれば、明後日のフライトでも十分に戻れるはずだったが。
「途中、テロ騒ぎでバタバタしましたからね」
「あんまり延長になったら、Drに叱られるんじゃありませんか?」
 くすくすと笑うマーティを軽く一睨みして。
「それはちゃんと伝えてあるから」
「へえ、そうなんですねぇ」
「ええ、そうなんです」
 ちょっとだけ憮然として。
 橋爪とのことは、たとえ二人の仲を良く知っている隊員達にさえ踏み込んで欲しくはないプライベートエリアのことだから。
「マーティ」
 さすがに、篠井もマーティを制するかのようにちょっとだけ苦笑した。
「マーティはこちらの出身でしたよね?」
「あ、はい」
「こちらは明日にも終わりそうですし、1日しかありませんが、帰省してきませんか?」
「ですが」
 躊躇ったように視線を泳がす青い瞳を持つ青年に篠井は微笑んだ。日本ではなく、こちらの風景にこそ溶け込む容貌を持つ青年だから。
「せっかく、地元に戻ってきたんですし。日本に戻ったら、またそう簡単にロスに帰してあげることは出来ませんからね。仕事だけじゃなく、ご家族やご友人に会ってきていいんですよ?」
「でも、篠井さん……」
「行って来い、マーティ。一日くらいなら、SPの真似事してやる」
 西脇もそういってマーティをけしかけて。
 実際、ロスはマーティのホームグラウンドでもあり、友人も多いのだから。
「……そういっていただけるのなら、遠慮なく」
「西脇さんも、私に付き合わなくても、半日くらい、お休みでもいいんですよ? どちらにせよ、私は残務処理でここにいるでしょうし」
「俺はいい。今更、ここをぶらぶらしても仕方ないしな」
「ああ、西脇さんもここにいましたっけ?」
「半年くらいだがな……石川と研修に来ていた」
 西脇はギシリと備え付けの古いソファを軋ませると立ち上がった。
「じゃあ、決定ということで。先に休ませてもらいます」
「はい、お疲れ様でした」
「おやすみなさい、西脇さん」
「おやすみ」
 西脇は与えられた部屋に戻るとネクタイを引き抜いた。あれ以来、橋爪へ電話をかけることもなく。
 日本時間ではまだ夕方で、仕事熱心な橋爪は勤務に没頭している頃だろう。そんな橋爪の邪魔はしたくなくて。
 ただ短いメッセージメールを橋爪のパソコン宛に送ると携帯を閉じた。
『帰国は20日の夕方の予定』
 そして、書類を広げた。帰国までにやらなければならない仕事もまだ山のように残っているから。


 次の日、起きると橋爪からの短いメールが入っていた。
『おはようございます。こちらは相変わらずですよ。この前の爆弾騒ぎもようやく落ち着きました。気をつけて戻ってきてくださいね。待っていますから』
 それだけで、どれだけ心が温かいもので満たされるか。
 書類を整え、出かける準備をしていると控えめにインターホンがなった。
「はい?」
「朝早くからすみません、マーティです」
「ああ、開ける」
 開錠すると、固い顔をした副隊長のSPがそこに立っていた。
「西脇さん……」
「どうしたんだ?」
 プライベートでこういう顔はしないだろう。
 だとすれば、隊に関する……しかも、JDGでのこと以外にはないだろう。
「申し訳ありませんが、石川さんから電話が入っています。西脇さんにもおいでいただきたいと、篠井さんが……」
 出発の前に感じていた嫌な予感が甦ってくる。
 あの時は単純に橋爪と離れがたいがためのものだと自分に言い聞かせてきたが……
「……あっちで何かあったんだな?」
 確認するように低く呟くと、マーティはゆっくりと頷いた。
「テロのようです。詳しい話はまだ私にも……今、篠井さんと石川さんが話しています」
「分かった」
 足元から何かが崩れていく、そんな感覚が全身を包んでいた。

 


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