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    <title>永遠の詩</title>
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テンプレ･レベルから徹底的に検索除けをかけているので、ここへは一般のお客様は入れません……多分（笑）</description>
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    <dc:date>2019-03-18T23:53:54+09:00</dc:date>
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    <title>083</title>
    <description>自分でも頑なになっているのは分かる。だが、全てを受け入れるとはいいつつも、自分の感情の中では唯々諾々と己の非を認めることはできなくて。
　きっと今日も石川はだんまりを続けることだろう。決まったことを淡々とと口にするだけかもしれない。
　だが、真っ直ぐに向き合って手を差し伸べようとした石川の気持ちを拒...</description>
    <content:encoded><![CDATA[自分でも頑なになっているのは分かる。だが、全てを受け入れるとはいいつつも、自分の感情の中では唯々諾々と己の非を認めることはできなくて。<br />
　きっと今日も石川はだんまりを続けることだろう。決まったことを淡々とと口にするだけかもしれない。<br />
　だが、真っ直ぐに向き合って手を差し伸べようとした石川の気持ちを拒絶したのは他ならない自分だから。救いの手は橋爪へこそ差し伸べられるべきものであって、決して自分へ向けるべきものではないから。<br />
「すみません、西脇さん」<br />
　部屋の外からから声がかけられ、そっとドアが開かれた。<br />
「&hellip;&hellip;ああ&hellip;&hellip;」<br />
「朝食を持ってきました」<br />
「&hellip;&hellip;悪いな」<br />
　村井はゆっくりと首を振った。<br />
「昨夜はあまり食べられてませんから、お腹も空いたでしょう？　足りなければ、また作ってもらいますから」<br />
「&hellip;&hellip;ずっと寝ていたから、たいして空いてもいないよ。すまないな」<br />
「&hellip;&hellip;いえ。じゃあ、ここに置いておきますね。後で片付けに来ますから、そのままにしておいてください」<br />
「&hellip;&hellip;ありがとう」<br />
　僅かに笑んで、西脇は村井を送り出した。<br />
　机の上には西脇が朝から好んで食べるサンドイッチと温野菜のサラダ、そしてスープ。すべては西脇の疲れた心と体とをいたわるかのように準備されたのだろう。岸谷もそれに一枚噛んでいるに違いない。<br />
　ゆっくりと手に取って口に運ぶ。美味くないとは言わない。平素の自分なら、食べなれたその味にすぐさまに完食してしまうことだろう。だが、皆の厚意が垣間見られた時点で、それを重荷に感じてしまう自分に嫌気がさす。<br />
　まるで砂を噛んでいるかのような味気ない食事を早々に終わらせ、再び窓の前へと立った。<br />
　メディカルルームの窓からいえる風景はいつもと全く変わりはない。青々とした木々の色も、合間からうかがえる外警の隊員たちの様子も何一つ変わりはない。変わったとすれば、自分自身の気持ちだけ。<br />
　まっすぐに向けていた仕事への情熱が、歪んだ形で自分の中で渦を巻いているかのようだ。自覚はあるが、それでもそれをどうすることもできなくて。<br />
　目の前に橋爪がいれば話は違うのかもしれない。彼の存在が、自分の善意でもあり良心でもある。だから。<br />
「西脇さん？　用意は済まれましたか？」<br />
「用意するものなど何もないが」<br />
　顔を出した村井へそう告げる。実際ベッドの傍らに置いたベストを羽織り、乱れた制服を直すだけなのだから。<br />
「トイレには行きたいかな」<br />
「そうですよね。少し待ってもらえるようにしますね」<br />
　そういって、村井はどこかへと電話し、部屋から出るよう促された。<br />
　本当ならシャワーでも浴びてスッキリしたいところなのだが、それを告げるのも億劫だった。<br />
　無精髭と寝乱れた制服のまま他人の前に姿を現すということ。少し前までの自分なら考えもしないことだった。<br />
　用を足し、ついでに洗面所で顔を洗い口を濯いだ。<br />
　それでもすべての気力を使い果たしてしまった気がする。<br />
「おはようございます、西脇さん」<br />
　トイレから出ると、そこにはマーティが待っていた。<br />
<br />
<br />
]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2019-03-01T23:52:55+09:00</dc:date>
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    <title>082</title>
    <description>
　
　夜が明け切ったころ、メディカルルームに篠井がやってきた。
　ほんやりとした思考の中で、西脇は辛うじて起き上がると篠井を迎え入れた。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;ほとんど休めていない顔色ですね」
　わずかに苦笑めいた笑みを浮かべて、篠井は西脇を見てくる。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<br />
　<br />
　夜が明け切ったころ、メディカルルームに篠井がやってきた。<br />
　ほんやりとした思考の中で、西脇は辛うじて起き上がると篠井を迎え入れた。<br />
「&hellip;&hellip;ほとんど休めていない顔色ですね」<br />
　わずかに苦笑めいた笑みを浮かべて、篠井は西脇を見てくる。<br />
「&hellip;&hellip;休みはした」<br />
　そういえば、麻酔の影響は抜けたのか。吐き気を伴う頭痛はほぼ治まっていた。<br />
「西脇さん。あなたらしくない、と今回のことを叱るのは簡単ですが」<br />
　篠井が言葉を選びながらゆっくりと口を開く。<br />
「それだけの理由があったのだとは思います」<br />
「&hellip;&hellip;いや」<br />
　西脇は篠井の言葉を遮った。<br />
「理由なんかない」<br />
「え？」<br />
「&hellip;&hellip;単にキレただけだよ。今時の若者と同じように、覚えてもいない程度の些細な言葉にキレて、つい、暴力を振るってしまった。それが真実だ。理由なんてどこにもない」<br />
　言い訳や自己弁護はしない。保身を図るつもりもない。<br />
「事実は事実だ。処分は全て甘んじて受け入れるつもりだ」<br />
　だからもう、誰の言葉を受け入れるつもりもないから。<br />
　篠井はまじまじと西脇の顔を見つめ、小さく首を振った。<br />
「&hellip;&hellip;では、あの時何があったのか、聞いても構いませんか？　あとで、どちらにせよお話していただくことにはなりますが」<br />
「それは、あんたたちの方が分かっていることじゃないのか？」<br />
　西脇はベッドの上で居住まいを正し、篠井を真っ直ぐに見やった。<br />
「映像で確認できることなどごく僅かです。私はその時の西脇さんの気持ちが」<br />
「知ってどうするんです？　だからと言って、どうにもならないことなど、篠井さん自身がよく分かっていることでしょう。元より委員会寄りなんだ。目に見える、そして記録された事象が全て。それでいいんです」<br />
　ただ淡々と言葉を口にした。感情などどこかに消え去ったかのように、そこにはどんな感情も介在していなかった。<br />
「少しでも処分を軽くしたいんですよ。それにはあなた自身の証言が必要なんです。分かっていますよね？」<br />
「&hellip;&hellip;あんたもここの空気に随分と毒されたようだ。委員会には&hellip;&hellip;宮沢さんには、どんな言い訳も通用しない。大人しく叱られることにするさ」<br />
「分かっているなら尚更ですよ」<br />
　呆れたように呟く篠井に西脇は首を振った。<br />
「だからだよ、篠井さん。分かっているからこそ、自分の言い訳はしない。自分を正当化したくはない。どうせ、ここの話も石川に伝えるんだろう？　だから、あんたに言っておく。俺の代理、または後任は羽田に任せる。外部からヘルプを呼ぶ必要はない。羽田なら十分に独り立ちしてもやっていける」<br />
「&hellip;&hellip;それは、除隊するということですか」<br />
「&hellip;&hellip;委員会がそれを決めたのなら、それに従うということだ。それ以上もそれ以下もない」<br />
　西脇はそれきり口を噤んだ。これ以上話をしても堂々巡りのまま何の進展もないだろう。<br />
　しばらくの沈黙の後、篠井は立ち上がった。<br />
「&hellip;&hellip;あとで、私かマーティが迎えに来ます。それまでに食事は済ませておいてください」<br />
　じろりと見やると、篠井は小さくため息をついてしまった。<br />
「&hellip;&hellip;朝早くからすみませんでした。では、失礼」<br />
　小さな溜息をついて篠井はメディカルルームを出て行った。ドアの外で誰かとわずかに会話を交わし。そして篠井の足音は消えていった。<br />
　西脇はベッドから降りると窓を開け外を見やった。早朝独特の少しひんやりとした空気が流れ込んでくる。エアコンの人工的な冷気よりはずっとましだった。<br />
<br />
]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2016-10-08T23:56:01+09:00</dc:date>
    <dc:creator>Sillygames</dc:creator>
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    <title>081</title>
    <description>「西脇さん、失礼します」
　落ち着く落ち着かない以前の問題として。
　一人きりで何もない部屋に取り残されては寝ることしかできない。ましてや、体の不調を抱えていればなおさらだ。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;西脇さん&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;？」
　眠りと現実の狭間を行ったり来たりしていた時...</description>
    <content:encoded><![CDATA[「西脇さん、失礼します」<br />
　落ち着く落ち着かない以前の問題として。<br />
　一人きりで何もない部屋に取り残されては寝ることしかできない。ましてや、体の不調を抱えていればなおさらだ。<br />
「&hellip;&hellip;西脇さん&hellip;&hellip;？」<br />
　眠りと現実の狭間を行ったり来たりしていた時に、カーテン越しに看護師の村井が恐る恐る声をかけてきた。<br />
「&hellip;&hellip;ああ」<br />
「あの、食事を持ってきました。起きれます？」<br />
　ベッド用のサイドテーブルに食事のトレーが乗せられる。<br />
「&hellip;&hellip;食欲はないから、そのまま下げてくれ」<br />
　実際、先程までのひどい状態ではないにしろ、頭痛、胃のむかつきなども消えたわけではない。食欲など沸こうはずはない。<br />
　横たわったままぼそぼそと呟くと、村井は何とも言えない表情を浮かべてしまった。<br />
「&hellip;&hellip;西脇さんまで、そんな」<br />
　村井の脳裏に浮かんだのは橋爪のことだろう。彼が悪いわけではない。彼に八つ当たりをしても仕方がない。<br />
「&hellip;&hellip;悪かった。少しだけでも食べるよ」<br />
「&hellip;&hellip;そうしてください」<br />
　西脇がベッドの上に起き上がると、サイドテーブルが西脇の前にずらされて温かな茶が出された。<br />
「村井」<br />
「はい、なんでしょう」<br />
「Ｄｒの様子は？」<br />
「いつもと変わりません。ただ」<br />
　わずかに村井がい言いよどむ。<br />
「ただ？」<br />
「&hellip;&hellip;その、西脇さんが来られないと、心配していらっしゃいました。テロがあったのはご存じだったようで、事後処理で忙しいのだろうとは思うけど、とおっしゃっていましたが」<br />
「&hellip;&hellip;そうか」<br />
　的確に現状を把握し、状況を推測することはできる。自分の戻りが遅いからと不安で泣いていた数日前までの橋爪ではもうないのだ。医務班の仲間であるとはいえ、自分以外の男に、今まで通りに応じることもできるのだから。<br />
　橋爪は自分がいなくてももう大丈夫なのか。<br />
　無力感が西脇を包む。どこか張り詰めていたたった一本の糸がぷつりと切られてしまった気もして。全てがどうでもいい気がした。<br />
　少なめだった食事の、さらに中ほどで西脇は箸を置いてしまった。<br />
「西脇さん？」<br />
「&hellip;&hellip;すまんが、まだ吐き気が残っているんだ」<br />
「&hellip;&hellip;そうでしたか。あ、だったら、シャワー浴びますか？　気分転換にもなるだろうし」<br />
　西脇は緩く首を振った。<br />
　村井が限られた自由の中で、何とか西脇の気持ちを浮上させてくれようとしているのは分かる。それでも、今はその気遣いすら煩わしい。こんな夜に夜勤になってしまったのが彼の不運ともいうものだろう。<br />
「&hellip;&hellip;村井。大丈夫、逃げも隠れもしないから&hellip;&hellip;自分の仕事に戻っていい」<br />
「ですが」<br />
「トイレくらいは行くかもしれんが、後は大人しくしている」<br />
「&hellip;&hellip;分かりました。後でまた顔は出しますが、かまわず休まれてください」<br />
　村井は小さくため息をつくとカーテンを閉めてＡ室から出て行った。<br />
　何をすることおなく、何を考えることもなく、薄闇の中で宙を見つめるだけの時間。<br />
　これは他ならぬ西脇自身が橋爪に強いた時間だった。その責めを今負っているのだとしたら、自分にそれを拒否することはできない。<br />
　ベッドに転がり目を閉じると、浮かび上がるのは真っ赤に染まった空と下卑た笑みを浮かべるテロリスト。<br />
　乱闘の最中にテロリストが発した暴言の何かが自分の心の中のストッパーを外した。その言葉が何だったかなんて覚えてはいない。そして、きっと思い出せもしないだろう。いつもなら乱闘中でもどこか平静を保とうとする自分の理性さえ、その暴言に反応してしまった。それだけは思い出せる。<br />
　血のように赤く染まった視界の中で、その瞬間だけは橋爪のことを思い出しもしなかった。橋爪のためだといいつつ、橋爪の存在や橋爪の気持ちはどこにもなかった。<br />
<br />
]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2016-01-19T01:33:24+09:00</dc:date>
    <dc:creator>Sillygames</dc:creator>
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    <title>080</title>
    <description>Ｂ室のドアを開けると、ぴりぴりと張り詰めた空気が西脇を包む。中には退勤したはずなのに、未だ制服に身を包んだ石川、岩瀬と篠井、マーティがいた。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;これはまたお揃いで」
　これ以上口を開けば嫌味めいた言葉しか出せなさそうで。西脇はぐっと拳を握りしめ口を噤んだ。
「&amp;amp;hel...</description>
    <content:encoded><![CDATA[Ｂ室のドアを開けると、ぴりぴりと張り詰めた空気が西脇を包む。中には退勤したはずなのに、未だ制服に身を包んだ石川、岩瀬と篠井、マーティがいた。<br />
「&hellip;&hellip;これはまたお揃いで」<br />
　これ以上口を開けば嫌味めいた言葉しか出せなさそうで。西脇はぐっと拳を握りしめ口を噤んだ。<br />
「&hellip;&hellip;西脇」<br />
　石川がゆっくりと口を開いた。その視線はまっすぐに西脇に向けられている。<br />
「覚えているか？」<br />
　決して言葉は多くない。それでも補足する必要のない疑問だけがまっすぐにぶつけられる。<br />
「&hellip;&hellip;いや」<br />
　経緯も結末も何も記憶はない。だから、西脇は曖昧に言葉を濁すことしかできない。<br />
「何があったのか聞いても無駄か？」<br />
「&hellip;&hellip;そうだな。きっと、俺よりはお前の方が状況も把握しているだろうしな」<br />
　覚えているのは極僅かなことだけ。だが、そんな記憶の断片を繋ぎ合わせればおぼろげながらも見えてくる全体像はある。それで察している状況は決して愉快なものではないから。<br />
「それでも&hellip;&hellip;まずは、申し訳ありませんでした、と詫びるべきか」<br />
「覚えていないことに謝罪されても意味はない」<br />
　石川によってバッサリと切り捨てられた。<br />
「&hellip;&hellip;ま、そうだろうな」<br />
「西脇」<br />
　西脇は石川を真っ直ぐに見下ろした。<br />
「委員会にも報告が上がっているから、おそらく査問されるだろう」<br />
「&hellip;&hellip;ああ、そうだろうな」<br />
「先刻、テロリスト捕縛の際に必要以上の暴力行為があったのだと、テロリスト側から弁護士を通じて申し入れがあった。テロリスト側から、というのは本末転倒ではあるが、それでも犯罪者に対しても許される行為ではないことは事実だ。実際、あちらから診断書を提出されれば、それを受理するしかない」<br />
　石川の唇の動きに、西脇も視線を合わせる。<br />
「&hellip;&hellip;よくて始末書と謹慎。下手すれば減棒か、休職。一般人相手ならともかくテロリスト相手だったから、退職はさすがにないだろうとは思うが。今夜は目覚めていないということで、委員会の動きは抑えてあるが、その分だけあちらにも検討する時間を与えてしまったようなものだ。明日にはおそらく何らかの決断を持ってここに来るだろう」<br />
　石川の口調は淡々としていた。<br />
「&hellip;&hellip;これまでが忙しすぎたんだ。しばらくここで大人しくしていろ」<br />
「&hellip;&hellip;どういう意味だ」<br />
「何らかの結論が出るまで、ここで謹慎していろ」<br />
　さっきから出てくる「ここで」という言葉。そのこことは、いまいる、この場所、ということなのか。<br />
「ちょっと待て」<br />
「待つも何も、言葉通りの意味だ。医務室で大人しくしていろ。明日、誰かを迎えによこす。篠井もそのつもりで頼む。行くぞ」<br />
　石川は無表情のまま岩瀬を連れて医務室を出て行った。僅かに頭を下げて篠井が石川を見送り、そして西脇へと向き直った。<br />
「西脇さん、とりあえず今は体を休めることを考えて下さい。Ｄｒの食事は先ほど池上が運んでいきましたし、夜勤の看護師もいます。Ｄｒなら大丈夫ですから」<br />
「&hellip;&hellip;篠井さん」<br />
「すぐにも飛んで来ようとする委員会側を抑えるのに隊長も必死でした。少しだけ気が立っているのはその名残でしょう。詳しい話はまた改めてしましょう？」<br />
「&hellip;&hellip;分かった」<br />
「では、また明日来ますから」<br />
　Ａ室の扉が無情にも閉じられ、そして施錠される音がした。すぐに静寂が戻ってくる。<br />
　ここで謹慎ということが、暗に橋爪への接触も禁じられたのだということ。だからこそ、篠井までもが釘を刺すかのように心配はないと告げていったのだろうから。<br />
　橋爪の痕跡の残るこの場所で、なにより主の存在のない冷え切ったこの場所で。無為の時間を過ごすことは、この上もない苦しみとなって西脇の上にのしかかってくるのだった。]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2016-01-08T01:44:21+09:00</dc:date>
    <dc:creator>Sillygames</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
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  <item rdf:about="https://westbridge.blog.shinobi.jp/%E6%B0%B8%E9%81%A0%E3%81%AE%E8%A9%A9/079">
    <link>https://westbridge.blog.shinobi.jp/%E6%B0%B8%E9%81%A0%E3%81%AE%E8%A9%A9/079</link>
    <title>079</title>
    <description>気づけば、医務室のベッドに寝かされていた。
　部屋は薄暗く静まり返っている。嗅ぎ慣れた消毒薬の匂いだけが、そこが通い慣れた場所だと知らせているにすぎない。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;Ａ室の方、か&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;」
　でなければ、もう少し人の気配や騒めきもあるだろう。
　西脇は...</description>
    <content:encoded><![CDATA[気づけば、医務室のベッドに寝かされていた。<br />
　部屋は薄暗く静まり返っている。嗅ぎ慣れた消毒薬の匂いだけが、そこが通い慣れた場所だと知らせているにすぎない。<br />
「&hellip;&hellip;Ａ室の方、か&hellip;&hellip;」<br />
　でなければ、もう少し人の気配や騒めきもあるだろう。<br />
　西脇は起き上がると、途端に頭を抱え蹲った。吐き気を伴う重苦しい痛み。全身を包む鈍い倦怠感。先ほどまでの状態からは考えられないほどの不調だった。<br />
　先ほどまでのことはおぼろげにしか覚えていないが、麻酔かそれに類する薬品で無理やり眠らされたのだろうことは容易に想像できる。鎮静剤などといった生易しいものなんかでは決してない。<br />
　いくらか呼吸を繰り返すと、それでも僅かながらそれが回復し、僅かに周囲に気を向ける余裕も出てくる。　ぐるりと周りを見渡せば、枕元にメモが置いてある。<br />
『目が覚めたらナースコールで連絡して下さい』<br />
　名前は書いていないが大き目の癖のある字はきっと三浦のものだろう。<br />
　西脇はゆらりと立ち上がると、ベッドの周りのカーテンを開けた。無人のままのその部屋は、確かに橋爪が居城としていたＡ室だった。僅かに灯されている明かりだけが足元を照らす。カーテンが閉められた窓の外は先程までとは違い完全に闇の中に沈んでいるに違いない。<br />
「西脇さん！？」<br />
　僅かな物音に気付いたのか、村井が慌ててＡ室に入ってきた。<br />
「起きて大丈夫ですか？」<br />
「&hellip;&hellip;大丈夫じゃない&hellip;&hellip;」<br />
　愛想笑いを浮かべる気力もなく、西脇はぼそぼそと呟いた。<br />
「とりあえず、ベッドに座ってください&hellip;&hellip;あ、三浦医師」<br />
「うん。西脇さん、いきなり動いたらきついでしょ。ベッドに戻って&hellip;&hellip;ゆっくりでいいから」<br />
　西脇は無言のままベッドに腰かけた。<br />
「村井君、隊長に連絡して。きっとまだ起きて待ってると思うから」<br />
「あ、はい」<br />
　村井が部屋を出ていくと、三浦は小さく息を吐いた。<br />
「西脇さん、少し診せてもらってもいいかな？　できたらシャツを肌蹴て&hellip;&hellip;肩、見たいから」<br />
　痛みの元はそこだったのかと何となく思い、無言のままシャツのボタンを外し、下着代わりのＴシャツももろとも勢いよく脱ぎ捨てた。<br />
「脱がなくてもよかったんだけど&hellip;&hellip;今更か。失礼」<br />
　三浦はゆっくりと西脇に触れた。ヒンヤリとした三浦の指が西脇に悪寒をもたらす。<br />
「&hellip;&hellip;痣にはなってないね、よかった。少し熱は持ってるみたいだけど、しばらくすると落ち着くから」<br />
　じろりと見やると三浦は苦笑した。そして、西脇が脱ぎ捨てたシャツを肩から掛けてきた。<br />
「頭痛はない？　吐き気は？」<br />
「&hellip;&hellip;最悪」<br />
「だよね&hellip;&hellip;麻酔銃で撃たれたの、覚えてる？」<br />
「&hellip;&hellip;覚えてはいないが、そうだろうとは思った」<br />
　そうとしか言えない。実際、その瞬間のことを思い出すことはできない。何となく自分の行動の記憶はあるが、詳細を思い出そうとすると脳内に霞がかかったかのようにすべてが曖昧になる。覚えているのは目の前にいたテロリストへの憎しみだけだ。何故、いつものテロリストと相対する時とは違い、そんな憎悪を感じてしまったのか&hellip;&hellip;<br />
「&hellip;&hellip;頭痛と吐き気があるのは少し我慢して。しばらくすると抜けて楽になるから&hellip;&hellip;使われた麻酔薬は強いものじゃないし、多分、朝には完全に抜けてると思うよ」<br />
「&hellip;&hellip;そうでないと困る」<br />
　西脇はゆらりと立ち上がった。そんな西脇を三浦は怪訝そうに見上げてきた。<br />
「西脇さん？」<br />
「&hellip;&hellip;トイレくらい行かせろ」<br />
「あ、ああ、そうだね。じゃあ、終わったらＢ室の方にいいかな？」<br />
「&hellip;&hellip;分かった」<br />
　どこか現実感に乏しい会話をし、西脇は用を足した。確かに自分のいる場所はここなのに、それでもどこか違和感を感じるのは薬のせいか。<br />
　手を洗い鏡を見やると、目だけがぎらついた違和感のある男がそこに立っているだけだった。それは紛れもない今現在の自分自身の姿なのだろう。]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-12-05T19:04:36+09:00</dc:date>
    <dc:creator>Sillygames</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>Sillygames</dc:rights>
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    <title>078</title>
    <description>
　結局のところ、橋爪の復職が堺に認められたわけではなく、そのまま無期限の長期休暇を取得することになった。石川の進言通りに、病室を居室として。
　その方が西脇としても安心はするし、橋爪の方も一人無為のまま自室に籠もることもない。時折は事情を知るわずかな隊員たちも見舞うことができるから。西脇にとっても...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<br />
　結局のところ、橋爪の復職が堺に認められたわけではなく、そのまま無期限の長期休暇を取得することになった。石川の進言通りに、病室を居室として。<br />
　その方が西脇としても安心はするし、橋爪の方も一人無為のまま自室に籠もることもない。時折は事情を知るわずかな隊員たちも見舞うことができるから。西脇にとっても橋爪にとっても、最上ではないかもしれないが取りうるベストに近い選択肢の一つとして。<br />
　ただ、橋爪への依存は自分でもどうかしていると思うほどに、日に日に酷くなっていく。<br />
　ただそこに橋爪がいればいい。そうすれば自分は自分としてまっすぐに立つことができる。その白い部屋にさえ居てくれるのならば―――<br />
　こんなふうに、橋爪を籠の中の鳥のように扱いたいわけではない。橋爪を一人の男としてみるのなら、絶対にありえないことだ。こんな軟禁状態を橋爪の意思を無視してでも強要してしまうのは、結局のところは自分自身が安心するからという身勝手な理由にしか過ぎない。<br />
　この奇妙な状態が周囲に訝しがられてはいても黙認されているのは、西脇こそのそんな状態が理解されてのことなのだろうから。<br />
<br />
<br />
　無理をすればどこかに綻びが生じる―――それは当然のこと―――<br />
<br />
<br />
　いつものようにテロリストの襲撃の報に討って出たのは覚えている。<br />
　ふと気づけば目の前の男たちを暴力で叩きのめし、銃口を突き付けていた。男の絶叫と、僅かに遅れて自分の手から銃がもぎ取られた痛みに、一瞬でも気を取られなければ発砲していたかもしれない。<br />
　目の前の男がさらに声高に何やら叫ぶ。<br />
　西脇はそれを蹴りつけ地面にねじ伏せたところ、自分の体に衝撃が走り反対に何故か取り押さえられていた。<br />
「放せっ」<br />
「待って。いいから、落ち着いて」<br />
　少し英語なまりのある言葉はグレイのもの。そして、引きずり起こされた先に見えたのは自分の上司でもある石川の顔。とすれば、自分を押さえつけているのは岩瀬か、グレイか―――<br />
「落ち着いている」<br />
「いいから！」<br />
　耳元で聞こえた制止の声に、自分を押さえつけているのはグレイかと確信した。<br />
　ちゃんと現状を把握するだけの冷静さならある。それでも、目の前の言葉の形すら取っていないテロリストの叫びを聞いていると、体のどこか奥深くからふつふつと湧き上がってくるものがある。<br />
　―――犯罪者。<br />
　―――テロリスト。<br />
　いろんな呼称はあれど、法を犯した人間には違いなく。<br />
　そして、なにより。<br />
　こういった男たちに橋爪は辱められたのだ。己の非を正当化し、権利を主張する男たちによって。<br />
　もがき、僅かに緩んだ手の中から、西脇はさらに殴打を加えようとした。だが、それは寸でのところで阻まれ、肩口に重い衝撃が走った。見れば銃を構えた岩瀬が立っていた。横にいた石川までもが厳しい表情を浮かべている。<br />
「&hellip;&hellip;な&hellip;&hellip;で&hellip;&hellip;」<br />
「なんなんだよ、そのケービイン！」<br />
　男がさらに叫びだす。騒音めいた声に、余計にグラグラとした感覚が西脇を襲う。<br />
「&hellip;&hellip;二人を連れていけ」<br />
　固い声音で石川がやっと言葉を発した。<br />
「&hellip;&hellip;石&hellip;&hellip;？」<br />
　意識がゆっくりと途絶えていき、ぐらりと体が傾いだ気がした。それでも地面に倒れこんでいないのはグレイがこの体を支えてくれているからか。<br />
　目に映ったのは、視界いっぱいに広がる真っ赤な空だった。落日の時刻も近いのだろう。まるで血で染め抜いたような空の色だった。<br />
　たぶん、橋爪が絶望の中で見上げたのと同じ空の色なのかもしれない。<br />
　赤く紅い空の色―――<br />
<br />
]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-10-17T00:50:25+09:00</dc:date>
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    <title>077</title>
    <description>「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;医務班の誰かを呼んで病室に戻ってくれないかな&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;それが俺も一番安心する」
「それは&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;」
　橋爪の顔など見なくても分かる。きっと、このところ橋爪が浮かべるようになってしまった、意に染まない時の僅かに引き歪んてい...</description>
    <content:encoded><![CDATA[「&hellip;&hellip;医務班の誰かを呼んで病室に戻ってくれないかな&hellip;&hellip;それが俺も一番安心する」<br />
「それは&hellip;&hellip;」<br />
　橋爪の顔など見なくても分かる。きっと、このところ橋爪が浮かべるようになってしまった、意に染まない時の僅かに引き歪んている笑みすら消し去ったあの顔だ。<br />
「さっき点滴はしてもらったし、少し休めば落ち着くから。ほんとに、ごめん。今夜だけだから&hellip;&hellip;」<br />
　橋爪を拒絶する。受け入れがたく思ってしまう。<br />
　多分、今の不調がそんな気分にさせているんだとは思う。分かってはいても、自分ではどうしようもないことだから。<br />
「&hellip;&hellip;わかりました」<br />
　ひんやりとした手で橋爪は西脇の頬を撫でた。掠るだけの小さなキスをその頬に落とすと、無言のまま部屋を出て行った。<br />
　一人きりで。<br />
　たった一人きりで戻れるというのか。<br />
　慌ててソファから起き上がり、ぐらりと襲ってきた眩暈にソファの座面にうずくまった。必死で背もたれにしがみ付いて呼吸を整えると、僅かに復調してくる。<br />
　外しかけていたタイを抜きテーブルの上に放り投げると、僅かによろめきながらもドアにたどり着いてドアの開閉ボタンを叩いた。微かな機械音がしてドアが開き、隊員たちの出すいろいろなざわめきが一気に流れ込んでくる。足音だったり、微かなしゃべり声だったり。普段は気にもならないそんな物音すら、ガンガンと西脇を苦しめる。<br />
　橋爪がどちらへ行ったのか、その気配を窺おうとし、ぎょっとして足元を見た。そこにはドアの傍らに座り込んで俯いた橋爪がいたから。ドアが開き西脇が出てきた気配に、橋爪はのろのろと顔を上げた。<br />
「&hellip;&hellip;何しているんだ、こんなところで」<br />
　溜息をつきつつ、西脇はガシガシと頭をかいた。心のどこかがひどくイラついてくる。<br />
「&hellip;&hellip;それでも、心配で、その、私&hellip;&hellip;」<br />
　言いかけた橋爪の語尾がどんどん沈んでいく。<br />
「Ｄｒは、他人の心配をしている場合じゃないだろ」<br />
　座り込んでいた橋爪の手を引き、強引に廊下から立ち上がらせた。<br />
「あの」<br />
「廊下に座っているくらいなら部屋にいろ」<br />
　西脇は橋爪の手を引き、部屋の中へと促した。それでももじもじと入り口近くで立ち尽くしている橋爪の背を押し、ベッドへと座らせる。<br />
「&hellip;&hellip;泊まっていくの？」<br />
「&hellip;&hellip;迷惑でなければ&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;別に。ここはＤｒの部屋だし、いちいち許可を取る必要はないだろ」<br />
「&hellip;&hellip;それでも&hellip;&hellip;」<br />
　尚も何かを言いつのろうとする橋爪を西脇はベッドに押し伏せた。<br />
「西脇さんっ！？」<br />
　暴れかけるその体をそっと抱き込むようゆっくりとベッドへ横たわった。そのまま、ただゆっくりとその体を引き寄せ、その肩口へと顔を埋めた。<br />
　西脇の意図はわからずとも、その西脇の苦しさは分かるのだろう。橋爪は西脇の頭を抱え込むようにゆっくりと腕を回してきた。<br />
　ただの優しい抱擁。<br />
　疲れた心と体を癒してくれる、何よりのものだった。<br />
　ただ、このまま、抱きしめていてくれればいい、いつもと変わらぬおおらかな優しさの中で。そうすればきっと、自分もその腕の中で眠れるだろうから。<br />
「&hellip;&hellip;紫乃&hellip;&hellip;」<br />
「はい」<br />
「&hellip;&hellip;そのまま、そっと抱いていて&hellip;&hellip;？」<br />
「はい」<br />
　ゆっくりと瞼が重くなってくる。いつもならまだ眠ることなど考えもしない時間なのだが、先ほどの薬がまだ残っているのかもしれない。<br />
　橋爪に抱かれた手と、そっと髪が好かれる優しい感触がさらに眠気を誘ってくる気がする。<br />
「&hellip;&hellip;お休みなさい、西脇さん」<br />
「&hellip;&hellip;ああ&hellip;&hellip;おやすみ&hellip;&hellip;」<br />
　いつからここまで橋爪に依存するようになってしまったのか。それでも、この腕の中はこれほどまでに安らげるのだから。<br />
　暖かな温もりの中で西脇はゆっくりと意識を手放した。]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-09-17T00:42:50+09:00</dc:date>
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    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>Sillygames</dc:rights>
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    <title>076</title>
    <description>
　そっと自分を揺り動かす手に気が付いたのはどれくらい経ってからだったろうか。あるいはさほど経ってはいなかったのかもしれない。
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;西脇さん&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;」
　どんな状態でも間違うはずもない恋人の声にハッとし、慌てて起き上がった。ぐらりと酩酊めいた眩暈...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<br />
　そっと自分を揺り動かす手に気が付いたのはどれくらい経ってからだったろうか。あるいはさほど経ってはいなかったのかもしれない。<br />
「&hellip;&hellip;西脇さん&hellip;&hellip;」<br />
　どんな状態でも間違うはずもない恋人の声にハッとし、慌てて起き上がった。ぐらりと酩酊めいた眩暈が西脇を襲い、座面へとまた戻る。<br />
「寝るならベッドに行って&hellip;&hellip;」<br />
「紫乃&hellip;&hellip;？」<br />
「はい」<br />
「どうして―――」<br />
「&hellip;&hellip;三浦医師に、無理を言って連れてきてもらったんです」<br />
　橋爪はわずかに目を伏せた。先ほどの自分の不調を三浦から聞いてしまったのだろう。<br />
「&hellip;&hellip;いろいろお疲れだったんですよ&hellip;&hellip;今だけでもゆっくり休んで&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;まったく、余計なことを」<br />
「&hellip;&hellip;三浦医師を叱らないでやってくれませんか。無理に聞き出したのは私ですから」<br />
　ソファの傍らに膝をつき、ひやりとした橋爪の掌が西脇の額へと押し当てられる。<br />
　その手に手を重ねた。一瞬びくりと硬直したものの、橋爪は西脇のしたいようにさせてくれる。<br />
「&hellip;&hellip;気持ちいいよ」<br />
「&hellip;&hellip;よかった&hellip;&hellip;」<br />
　橋爪の頬がゆっくりと緩む。<br />
「&hellip;&hellip;あなたは謝るなというけれど」<br />
　橋爪は目を伏せたまま、そっと呟いた。<br />
「&hellip;&hellip;それでも、あなたにここまでの負担をかけたのは私なんですよね。だから、今だけは謝らせてください」<br />
　自分の心は橋爪には届いていなかったのか。<br />
　ふとそう思った。<br />
　橋爪のせいではない。繰り返し言ってきたこと。彼が罪悪感や後ろめたさを感じることなど何一つとしてないというのに。<br />
「&hellip;&hellip;勘違いだよ&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;え？」<br />
「ただの軽い熱中症。少し寝てれば大丈夫―――三浦医師、そういっていなかった？」<br />
「&hellip;&hellip;疲れが溜まると、熱中症にもなりやすくなるものです。だから&hellip;&hellip;」<br />
　橋爪の手を外し、ソファにそのまま足を投げ出した。真っ直ぐ見上げると、橋爪は怯んだように目をそらした。<br />
「疲れているのは長期出張明けで、そのまま連勤したから。でも、こうして休む時間を取ったんだ。紫乃が&hellip;&hellip;Ｄｒが気に病む必要はない」<br />
　橋爪も気持ちを完全に無視した言葉だということは、自分自身がよく分かっている。ただ、橋爪にはぐずぐずと引きずってほしくはないから。それとこれとは全く別の問題だから。<br />
　その頭に軽く手をのせ、かつてと同じように髪をひと房すくい取り滑らせた。パラパラと落ちていくのは髪だけではなく、自分の心の中の何かかもしれない。<br />
「&hellip;&hellip;でも、少ししんどいのは正直なとこ。だから、今夜はごめん。一人で眠らせてくれないかな」<br />
　今の橋爪の気持ちは重荷でしかない。その心配がよけに西脇の心を重くする。<br />
「&hellip;&hellip;じゃあ、私がこっちで休みますから、西脇さんがベッドに」<br />
　西脇は顔を腕で覆い、ゆるく首を振った。<br />
「&hellip;&hellip;ここでいい。今は移るのもしんどいから」<br />
「けど」<br />
「紫乃&hellip;&hellip;っここに泊まるのならベッドを使って」<br />
「西脇さん&hellip;&hellip;？」<br />
「&hellip;&hellip;ごめん」<br />
　そのまま西脇はソファの上で橋爪に背を向けた。言葉を口にするのも今は辛い。だけど、言葉にしなければ伝わらないこともある。<br />
　橋爪の心配が重荷に感じてしまう日が来るなんて思ってもいなかった。橋爪の存在を渇望しているのに、その存在を疎んじている自分がどこかにいることになど気が付きたくはなかった。<br />
<br />
]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-09-09T00:39:01+09:00</dc:date>
    <dc:creator>Sillygames</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
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    <title>075</title>
    <description>「寮だが&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;どうしたって、何が？」
　石川の問いかけに疲労感がどっと押し寄せてくる。
『三浦医師と一緒に戻ってくるかと思ってたんだよ』
「あのなあ&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;いくら俺だって、着替えたり、風呂入ったりするぞ」
　人として当たり前の生活の営み。その自由すら...</description>
    <content:encoded><![CDATA[「寮だが&hellip;&hellip;どうしたって、何が？」<br />
　石川の問いかけに疲労感がどっと押し寄せてくる。<br />
『三浦医師と一緒に戻ってくるかと思ってたんだよ』<br />
「あのなあ&hellip;&hellip;いくら俺だって、着替えたり、風呂入ったりするぞ」<br />
　人として当たり前の生活の営み。その自由すら、与えられないとでもいうのか。<br />
『そりゃそうだが』<br />
「&hellip;&hellip;三浦医師がわざわざ呼ばれて行ったんだ。それなりに具体的な話にはなったろう？　それに対して俺がどうこう口を出すこともない」<br />
『&hellip;&hellip;西脇&hellip;&hellip;？』<br />
「現実問題として、俺が口を出すことじゃない。もともと、決断はＤｒに委ねている。Ｄｒがどうしたいのか、それだけが問題だっただけだ」<br />
　西脇は深いため息をつくと起き上がり、携帯を握りなおした。<br />
「もう少ししたら病室に戻る。お前たちはもう部屋に戻っていいぞ」<br />
『Ｄｒを一人残して？』<br />
「残すなにも、いつものことだろうが&hellip;&hellip;仕事の時にはいつも&hellip;&hellip;」<br />
　誰もかれもが結局のところ、西脇が橋爪の元にいることが当たり前だと思っているのか。仕事や体調不良を抱えてなお、それでも橋爪の元へ居ろと。<br />
『&hellip;&hellip;確認しただけだよ。Ｄｒも、今のままじゃどうしようもないだろうけどさ、休暇を取ることで少しでも気分が変わればいいと思って』<br />
「&hellip;&hellip;次の休み、一緒に外に出る約束はしている。お前が気にすることでもない」<br />
『&hellip;&hellip;ならいいんだ』<br />
　幾分かほっとした声音の応え。<br />
　それでも、焦りや不安、そういったものを抱えているのは当然か。それが隊長としてか、友人としてかは別としても。<br />
「&hellip;&hellip;石川、おまえ抜きで話を進めて悪かったよ」<br />
『西脇？』<br />
「本来なら、宮沢さんじゃなくて、おまえが言い出すことだったろう？　でも、おまえは必至でＤｒを守ろうとしてくれていた。それなのに」<br />
『&hellip;&hellip;結果論だけど、俺はあれでよかったんだと思うよ。宮沢さんが言い出してくれなかったら、俺ではずっと言い出せなかった。そうした方がいいとは思っていても&hellip;&hellip;守っているつもりで、かえって傷つけていたかもしれない。さっき、Ｄｒと話してて&hellip;&hellip;そんなふうに思った』<br />
「&hellip;&hellip;そうだな&hellip;&hellip;」<br />
『西脇。今日はお前も本調子じゃないだろ。他に看護師を誰か回してもらうから、ゆっくり休め。な』<br />
「&hellip;&hellip;あー、はいはい」<br />
　暗に橋爪の部屋へは行くなと言われている気がした。実際、今の体調が橋爪に悟られてもしたら、橋爪のことだ。自分の不調はそっちのけで西脇の体調の心配をすることだろう。<br />
「Ｄｒにはちゃんと休むよう&hellip;&hellip;」<br />
　それだけが気がかりで。<br />
『ああ、三浦医師にお願いしておく』<br />
　ほんの少し距離を置いて、ほんの少し時間を置けば。そうすれば、また今まで通りに橋爪にもまっすぐに向き合えるはずだから。<br />
　実際、先ほどまでの皆とのやり取りの中で、帰国後ずっと見ないふりを続けていた自分の不調にも気づかされてしまったから。<br />
　通話を切る気力もなく、そのままソファにもたれた。<br />
　目を閉じても浮かんでくるのは橋爪の姿だった。合わせて浮かぶ苦い気持ちを必死で押し殺して。<br />
　いつもなら精力的に行う筋トレも、仕事のための情報収集も何もする気力がなく。<br />
　なんとなく部屋の呼び出しのブザーが鳴った気がし、ふと顔を上げた。しかし呼びかけがあるわけでもなく、追加で鳴らされるわけでもない。一瞬だけ感じた人の気配も気のせいだったようだ。<br />
　西脇は眠気に誘われるがままに、そっと目を閉じた。]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-08-03T00:39:40+09:00</dc:date>
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    <title>074</title>
    <description>
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;ごめんな、Ｄｒ。俺のわがままを聞いてくれてありがとう」
「&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;いいえ&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;」
　石川が深く頭を下げると橋爪は先ほど拒絶しかけた石川の手を取った。
「石川さん&amp;amp;hellip;&amp;amp;hellip;言いにくいことを言わせ...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<br />
「&hellip;&hellip;ごめんな、Ｄｒ。俺のわがままを聞いてくれてありがとう」<br />
「&hellip;&hellip;いいえ&hellip;&hellip;」<br />
　石川が深く頭を下げると橋爪は先ほど拒絶しかけた石川の手を取った。<br />
「石川さん&hellip;&hellip;言いにくいことを言わせてしまってごめんなさい」<br />
「そんなことはない。ただ、今のままじゃ、Ｄｒも中途半端に仕事が気になって休めないだろうし&hellip;&hellip;でも、休職するだけで、ここにはいていいんだからな？　むしろここにいて欲しいし&hellip;&hellip;その&hellip;&hellip;」<br />
「石川さん、大丈夫です。石川さんが気に病むことは何もない&hellip;&hellip;」<br />
　言いよどむ石川に橋爪はわずかに笑みを浮かべた。祈りを捧げるかのように石川の手をぎゅっと握ると、ゆっくりとその手を解放した。<br />
「&hellip;&hellip;西脇さん。すみませんが、三浦医師を呼んできてもらえますか？」<br />
「それなら、俺が」<br />
「西脇さん、お願いします」<br />
　岩瀬が立ち上がりかけたのをそっと制し、橋爪は縋るように西脇を見上げてきた。<br />
「&hellip;&hellip;分かった」<br />
　きっと、自分抜きで石川と話したいことがあるのだろう。もしくは先に自分の方から三浦に話すのを待っているのか。あるいはその両方か。<br />
<br />
<br />
　医務室へ入ると、退勤の準備を済ませた三浦がいた。今夜の夜勤は看護師の誰かのようだ。<br />
「帰るところだったみたいだな」<br />
「いいよ、少しくらいなら&hellip;&hellip;座って」<br />
「いや&hellip;&hellip;Ｄｒが三浦医師をお呼びだ。それを伝えに来ただけだ」<br />
「西脇さん、ちょっと待って」<br />
　そのまま医務室を出ていこうとした西脇の手を慌てたように三浦が引いた。<br />
「僕に話？　Ｄｒが？」<br />
「他にはないだろ」<br />
　三浦の手を振り解いて振り返った。<br />
「そうだけど」<br />
「石川達もまだ病室にいる。休職の件なら、さっき、石川が話してくれたよ&hellip;&hellip;Ｄｒも承諾した」<br />
「&hellip;&hellip;そっか」<br />
　わずかに目を伏せ、三浦は小さく息を吐いた。あたかも心外で承服はしかねるが仕方ないとでも言いたげな仕草。<br />
「分かってたことだろ。Ｄｒがそれを受け入れるしかないってことも&hellip;&hellip;実際、医務班でもその準備を進めていたんじゃないか」<br />
「&hellip;&hellip;ああ、そうだよ。Ｄｒがどういう気持ちでいようとも、そのつもりではいた。これでいい？」<br />
　そして、挑むように西脇を見てくる。<br />
「別に、言質を取るつもりで言ったんじゃない」<br />
　それに、西脇としても三浦に絡むつもりでもない。ただ、行き場のない思いがぐるぐると渦を巻いているだけだから。<br />
「&hellip;&hellip;じゃ、そういうことで。Ｄｒの病室に行ってくれ」<br />
「わかった」<br />
　三浦を置いて、そのまま寮の部屋に戻った。<br />
　キャビネットからブランデーの瓶を取り出すと、グラスを用意するのももどかしくそのまま煽った。強めのアルコールが喉を、次いで胃を焼きながら流れていく。繰り返しても、酔いは一向に西脇のもとへは訪れてこなかった。<br />
　半分以上残っていたはずの中身を全て飲み干し空になった瓶を放り出すと、ソファにもたれた。ただ宙を睨みつけていると、ポケットの中の携帯が振動しだした。取り出しのろのろと耳に押し当てる。<br />
「&hellip;&hellip;西脇だ」<br />
『西脇？　どうした？　どこにいるんだ？』<br />
　聞こえて来たのは先ほどまで一緒にいた石川の声だった。]]></content:encoded>
    <dc:subject>永遠の詩</dc:subject>
    <dc:date>2015-07-30T02:49:51+09:00</dc:date>
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